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DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)とは?
DEIとは、Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(一体性)を合わせた言葉で、多様な人材を活かすための組織づくりの指標のひとつです。
単に多様な人々が所属する組織というだけではなく、「多様な人々にとって公平に挑戦・活躍するチャンスがあり、一体感を持っている組織」であることがポイントです。
特にEquity(公平性)に関しては注意が必要です。
Equity(公平性)とEquality(平等)は混同されがちですが、上図のようにそれぞれの個性や差異に合わせて環境を整える状態がEquity(公平性)です。
またInclusion(一体性)がどういう状態かについても補足をしておきます。Inclusion(一体性)とは組織としての一体感がある状態を指します。一体感の醸成のためには、ひとりひとりが組織に対して心理的安全性を感じていることが大切です。
ただ多様な人々を集めて終わりではなく、Equity(公平性)とInclusion(一体性)を意識した組織づくりを目指すのがDEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)です。
表層的ダイバーシティと深層的ダイバーシティ
Diversity(多様性)とは具体的には何を指すのでしょうか?実は多様性には種類があります。それが表層的ダイバーシティと深層的ダイバーシティです。
表層的ダイバーシティとは、多くは外から見える違いのことで、自分で選ぶことのできない特徴のことをいいます。例えば人種・国籍・ジェンダー・障がいの有無・年齢などがそれに当たります。
それに対して深層的ダイバーシティとは外見から判断することが難しい特徴のことをいいます。例えば宗教・学歴・職歴・経済状況・文化的背景などが該当します。
表層的なダイバーシティだけではなく、深層的なダイバーシティに対しても公正な制度を用意することが本質的に多様性がある組織であるといえます。
DEIが重要視される背景
DEIが重要視されている背景には以下のような要因が挙げられます。
①労働人口の減少
②グローバル化
③働き方の多様化
①労働人口の減少
まず挙げられるのは国内の労働人口減少による人材不足です。女性やシニア層、さらには外国籍人材など人材の母集団そのものを拡大する必要に迫られています。
特にエンジニア採用市場における競争率は非常に激しく、記事後半で紹介している事例にもあるように海外の優秀なエンジニアを採用する動きが企業間で増えています。
②グローバル化
ここ数十年のグローバル化によって日本企業の海外進出や海外企業の日本展開などグローバルなビジネス展開がスタンダードになりつつあることも、DEI推進の大きな要因です。
異なる文化や価値観を持つ国でビジネスを展開するにあたって、国籍にとらわれない人材採用が経営戦略として重要な役割を果たすようになっていくことが予想されます。
③働き方の多様化
終身雇用制度が崩壊しつつあることに加え、新型コロナウイルス感染症拡大の影響にも後押しされリモートワークなど多様な働き方が受け入れられるようになりました。
それに伴い、出社して1日8時間労働するという従来の就業スタイルではなくても生産性の高い効率的な働き方ができるようになっています。多様な働き方を受容するような制度へと見直すことで、育児や介護、あるいは障がいなどによって働き方に制約があり就業へのハードルを感じていた人々にも能力を発揮してもらうことができます。
DEI取り組み事例
DEIを推進するために、具体的にどのようなことに取り組めばいいのでしょうか?いくつかの事例を紹介しますので、参考にしてみていただければと思います。
具体的な数値目標を立てDEIを推進ーBIPROGY株式会社
ビジネスソリューションを提供する大手ITサービス企業のBIPROGY株式会社は、女性社員の活躍推進企業やダイバーシティ企業として複数の賞を受賞するなどDEIに力を入れています。
特に外国籍人財と女性社員の割合を全体の50%以上にするなどの具体的な数値目標を立てることで、目に見える形でDEIを推進。さらには育児や介護などをしながらでも就業できるような制度に加えて、LGBTへの理解・支援施策も実施しています。
DEI推進を視野に入れた役員体制を構築ー株式会社インフキュリオン
従業員数の多いエンタープライズ企業が積極的に取り組む印象の強いDEIですが、約250名規模ながら今後の事業の展望を見据えてDEIを推進しているのがフィンテックサービスを展開する株式会社インフキュリオンです。
グローバル展開に向けた変化に柔軟な組織を目指して、外国人エンジニア採用などを行っています。
DEIを推進するメリット
エンタープライズからベンチャーまで取り組みが広がっているDEIですが、組織にとってどのようなメリットが得られるのでしょうか?具体的には以下の4点が考えられます。
①組織風土や文化に変化がもたらされる
②業務の効率化が促される
③新しいアイデアやイノベーションが生まれる
④外部からの評価が高まる
①組織風土や文化に変化がもたらされる
多様な働き方を受容するために制度を見直したり、異なるバックグラウンドを持つ外国籍人材の雇用を進めることによって、均質的だった組織風土や文化がアップデートされ変化がもたらされます。
変化の激しい世の中において、柔軟にカタチを変えていける対応力やしなやかさは強力な武器になることでしょう。これこそDEIを推進するべき本質的な理由といえるかもしれません。
②業務の効率化が促される
例えば育児や介護と仕事を両立している人材や障がいを持つ人材の割合が増えると、働き方に制約のある人もない人も高いパフォーマンスを発揮できるように業務プロセスを見直す動きが生まれます。
従来のやり方がベストだという固定観念から解き放たれることで、より効率的で生産性の高いやり方を見つけることができる可能性がある点も、DEIを推進する上でのメリットです。
③新しいアイデアやイノベーションが生まれる
グループ・シンク(集団浅慮)という言葉があります。これは過度に自信を持つ集団は逆に不合理な合意形成をしてしまう事象を指し、均質的な組織がおちいりやすいと言われています。
多様な価値観や文化的背景を持つ人々が集まる組織は、さまざまな角度からの意見が飛び交い、合意形成を取るために議論を重ねる必要があります。そのプロセスを通して、イノベーションが生まれやすい組織へと成長を遂げることができるかもしれません。
④外部からの評価が高まる
DEIに取り組んでいるかどうかは、次世代を生き抜く企業としての大きな指標です。DEIを推進していることで企業ブランディングが向上したり、取引先からの信頼を得ることができたり、採用面でも候補者から好印象を持たれるでしょう。
外部からの評価のためにDEIを推進することは本質的なDEIと呼ぶことはできませんが、DEIを推進した結果、外部からの評価が高くなることは期待することができます。
まとめ
DEIが注目される背景には、労働人口の減少という日本が直面する根深い課題があります。特にエンジニアの採用市場の厳しさは多くの企業が感じているでしょう。その打開策として外国人エンジニアの採用が注目されていますが、単純に「人が採れないから外国人エンジニアを採用する」だけではなく、DEIの観点からも組織の新陳代謝を促すファクターとして検討してみてはいかがでしょうか?