まずはベトナムがどんな国なのかを知ろう

ベトナムといっても、あまり具体的なイメージを持っていない方も多いかもしれません。「ベトナム人エンジニア採用を検討してみたい」という方は、まずはベトナム自体への理解を深めておきましょう。

ベトナムの経済成長率

まずはベトナム全体の経済について簡単にご紹介します。JETRO(日本貿易振興機構)の発表によると、ベトナムの2022年1~3月のGDP成長率は前年比5.03%でした。通年では6.0%以上の成長が見込まれています。
またData Commonsによれば、2022年6月時点でベトナムの一人あたりのGDPのアジアランキングは51カ国中36位です。新型コロナウイルス感染症の影響を受けつつも、右肩上がりの経済成長を見せています。

ベトナム人の給与水準

経済成長にともなって、ベトナム人の月間平均所得も増加しています。2020年時点では約423万ドンで、10年前の139万ドンに比べてなんと3倍の水準にまで上がりました。
423万ドンは日本円に換算すると約2万4000円です。地域によって格差があり、都市部では約3万2000円が平均です。
経済成長を続けている一方で、日本に比べると物価はかなり低い水準であることがわかりますね。

民族や宗教

ベトナムは54の民族によって構成された多民族国家で、8割以上はキン族が占めています。
信仰されている宗教は約8割が仏教です。このほかキリスト教(カトリック)やヒンドゥー教も信仰されています。またカオダイ教、ホアハオ教など、中には日本人には耳馴染みのない、ベトナム特有の宗教もいくつかあります。

宗教や文化の違いは、どんな外国人と働くにしても重要なポイントです。特に宗教への信仰が深い国の場合は、どんな配慮が必要なのかを理解しておく必要があります。
例えばキリスト教が信仰されている欧米では、クリスマスから休暇がスタートします。そんなタイミングに日本企業が会社行事を入れた結果、外国人エンジニアから「クリスマスには行事を入れないで欲しいです!」というリクエストがきたという話もあります。

ベトナム人エンジニアの特徴

次はベトナムという大きなくくりから、ベトナム人エンジニアにフォーカスして特徴を見てみましょう。国民性や語学レベルなど、ベトナム人エンジニアの採用にあたって知っておくべき情報を簡単にご紹介します。

国民性からくる性格

ベトナム人は一般的に、温厚な性格で器用な人が多いといわれます。また勤勉な性格なのも特徴で、空き時間に語学スクールに通うほど勉強熱心な人も少なくないようです。
エンジニアはコツコツ真面目にスキルや知識を積み重ねていく必要がある職業ですから、この点では適正が高いといえるかもしれません。

ただし、地域によって多少性格の差が出るともいわれます。というのも、ベトナムの国土は南北に長く伸びた形をしており、日本の北海道と沖縄のように地域によって気候が大きく異なるため、住民の性格にも影響があるのだとか。
厳しい暑さや寒さに見舞われることもある北部の人は真面目に貯金をするようなタイプが多く、年間を通して過ごしやすい南部の人は明るく陽気な楽天家が多い傾向があるようです。

外国語に対する語学力

世界的な英語能力試験EFをもとに算出された英語能力指数の世界ランキングによると、ベトナム人の平均英語能力は112カ国中66位です(2022年6月末時点)。日本は78位なので、ベトナムには日本人よりも英語能力に優れた人が多いことが伺えます。
これはベトナムが外国語教育、特に英語を重視しているのが影響しているのでしょう。

上記に加えて、特にエンジニアはプログラミングについて学ぶときに英語の公式ドキュメントを参照する必要などがあるため、ベトナム人エンジニアには英語が得意な方が多い傾向です。
社内に英語が飛び交っているような企業なら、無理にどちらかがベトナム語や日本語を使うよりも、お互いに英語を使ったほうが無理なくコミュニケーションが取れるでしょう。

またベトナムは親日国としても有名なので、日本で就職したい志向のあるエンジニアは、日本語を習得している可能性が高いです。日本国内だけを見ても、日本語学習者の出身国は(※)中国が最多の53,534人で33.3%、次いでベトナムが35,839人、3番目に多いのがネパールの9,314人となっています。

※参考元:文化庁国語課「令和2年度 日本語教育実態調査報告書 国内の日本語教育の概要」P24

エンジニア職の年齢層

ベトナムは人口に対して60歳以下の構成比が高く、2020年時点で15~59歳が占める割合は65%でした。平均年齢はなんと31歳!若者の人口が多い分、エンジニアも若年層の割合は非常に高く、20~29歳は全体の53.2%を占めます。
人材不足の今、若く優秀な人材を採用できる可能性が高いのは大きなメリットですね。

ベトナム人エンジニアの給与

ベトナム人エンジニアの給与は、すでにお伝えしたベトナム人の平均給与と比べてかなり高い傾向です。
TOP Devの発表資料を見てみると、ベトナム人のCTOやエンジニアリングマネージャークラスの平均月給は4000ドル以上なので、日本円に換算すると約54万円以上です。一方でフロントエンドエンジニアやバックエンドエンジニア、UI/UXデザイナーなどは大体12万円前後が平均となっています。
ベトナムのITエンジニアは国内で働いていても高給をもらえるので、日本で働く場合はそれ以上の給与を目指している可能性があるでしょう。

ベトナム人エンジニアの給与水準についての詳細はこちらの記事でも紹介しています。

https://xseeds-hub.sun-asterisk.com/vietnam-engineer-salary/

ベトナム人エンジニアの技術力を探る

それでは肝心の技術レベルはどれくらいなのでしょうか。ベトナムが注目されているオフショア開発の実績や得意なプログラム言語、開発領域、教育面などから探ってみます。

オフショア開発の実績

改めてオフショア開発とは、企業がアプリやシステムの開発工程を海外のベンダーに委託する手法です。
オフショア開発先としてベトナムが人気になっている第一の理由は、やはり人件費の安さです。また日本に限っていえば、時差の少なさや親日国家であること、国民性の相性なども少なからず影響しています。
その結果、ベトナムでは近年オフショア開発企業間での競争が激化。企業が切磋琢磨することで、さまざまな案件への対応力・技術力が向上しました。例えば数年前まではなかなか対応できなかった基幹システムも、オフショアで開発できるようになっています。
ニーズの高まりに応じて技術力が向上し、さらにオフショア人気が高まる……というサイクルが起きていると考えられます。

得意なプログラミング言語

ベトナム人エンジニアに人気のプログラミング言語はJavaScriptが第1位です。続いてJava、PHP、Python、C#などが続きます。フレームワークならLaravel、NodeJS、React、Vueなど、いわゆるモダンな開発環境で使われるようなものが人気です。
いずれも日本のIT市場においてニーズの高いポピュラーな技術ばかりなので、幅広い開発領域に対応できるでしょう。

日本では採用難易度の高い、Unityを用いたスマホアプリの開発やRubyによるバックエンド開発ができるエンジニアも多く見受けられます。

得意な開発領域

ベトナムのオフショア案件で最も多いのはWebシステムの開発で、サービス系・業務系をほぼ同じような割合で受注しています。
技術力という観点で見ると、サービス系の開発が多いのは一つのポイントです。ある程度要件がパッケージ化されている業務系の案件と異なり、サービス系は企業ごとに細かに仕様を決定し、ターゲットに合わせた難易度の高い開発をするからです。

またベトナムは他国と比べて、特にAI開発の案件が多い傾向もあります。先進技術が必要な開発に対応できるポテンシャルがあるのは、注目すべき点です。
若手エンジニア自身に先端テクノロジーを身に付けたい意欲があり、企業は人材の囲い込みのため、AI案件に積極的に取り組んでいるようです。

国策としてのIT教育

ベトナムは教育を国の最優先事項としており、特に注力しているのが情報技術です。いわゆるSTEM(科学、技術、工学、数学)教育と呼ばれる教育システムを推進しているため、小学校3年生からコンピューター教育を実施しているほか、学校自体のデジタル化やITツールの導入にも積極的なのが特徴です。

その結果、2017年にベトナムは国際数学オリンピックで世界3位を獲得。ここ10年の平均順位は10位で、これは日本やヨーロッパ各国よりも高い順位です。
また国際プログラミングコンテストでも近年好成績を残しています。特にベトナム国家大学ハノイ校は、ベトナムの名門大学として2015~2019年まで5年連続で決勝大会に進出しています。2018年の順位は15位。ハーバード大学やスタンフォード大学、インド工科大学よりも上位の成績を残しているのは驚きですね。

ベトナムは国全体として優秀なIT人材を輩出する素地を整え、すでにかなりの成果を出しているといっていいでしょう。

ベトナム人エンジニアを採用する方法

最後に、ベトナム人エンジニアを実際に募集・採用するならどのような方法があるのかについて、簡単にご紹介します。

人材紹介サービス

外国人エンジニア専門の人材紹介サービスを使うのがまず一つです。エージェントが人材とのマッチングから面談のセッティング、内定通知、就労ビザの取得など一連の業務をサポートしてくれるので、採用担当社の負担を大幅に軽減できます。

求人媒体

外国人エンジニア専門の求人媒体を通して採用する方法もあります。日本人の求人と同様、人材に求めるスキルや人柄のほか、報酬などの労働条件を掲載して募集します。
気になる人材がいたらスカウトメールを送るなど、ダイレクトリクルーティングも可能です。

まとめ

オフショア開発で人気が高まっているベトナム。国を挙げた積極的なIT教育を受けた若者たちは、すでに高い技術力を持って世界のIT企業で活躍しています。幅広くどんな分野でも対応可能なポテンシャルがありますが、特に大きな魅力は、今後さらなる活用が期待されているAI分野に強い点でしょう。

現在、日本国内で先端技術のスキルを持ったエンジニアを採用するのはかなりハードルが高いのが実情です。IT人材の確保のため、ベトナム人エンジニアの採用をする、あるいはオフショア開発先としてベトナムを検討してみてはいかがでしょうか。