背景

 今回、ベトナムと日本の学生合同でハッカソンを開催しようと思ったのには、「xseeds (Hub)」という事業の成り立ちに深い関わりがあります。

xseeds (Hub)とは

 xseeds (Hub)とは、ベトナムを中心とする海外トップレベル大学出身のテック学生に出会えるエンジニア採用プラットフォームで、「教育から内定〜入社までの約5年間、学生に寄り添い続ける」点が最大の特徴です。

▼xseedsの取り組みについて、詳しくはこちらをご覧ください。
https://xseeds.sun-asterisk.com/

 xseedsの前身は、JICA(国際協力機構)と、ベトナムの理工系大学の最高峰ハノイ工科大学が手を組んで「日本語のできる高度IT人材の育成」を目標に掲げたODAプロジェクト”HEDSPI”です。
 2014年以降、 Sun*(xseeds運営会社)がプロジェクトを引き継ぎ、xseedsへと名前を変え、提携先も4カ国12大学までに広げていきました。

 高い技術力と日本語力を備えたエンジニアを輩出することを念頭に置き、教育プログラムのブラッシュアップを重ね、現在までに826名のエンジニアを、日本企業への内定者として輩出しています。

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教育活動の一環として開催されてきたハッカソン

 ハッカソンに話を戻しますと、実は、xseedsが行う教育活動は大学での授業にとどまらず、課外活動としてハッカソンアイデアソンなどを実施してきたという実績があります。

▼2023年に実施されたアイデアソン「Be the Change」レポート
https://xseeds.sun-asterisk.com/teaching-20230928/

 xseedsの学生には熱量の高い人が多く、成果物のクオリティも高いため、毎年のハッカソン・アイデアソンも大いに盛り上がります。
 この熱気を伝える手段はないだろうか」と考えた末に思い至ったのが、日本人・ベトナム人学生合同のハッカソン開催でした。

 

概要

 本ハッカソンのもうひとつの特徴は、日本マイクロソフト株式会社との共同開催という点。
 同社の協力を得ることで、OpenAIの先進的な人工知能モデルを利用できるように設計された「Azure OpenAI Service」を使ったハッカソンが実現しました。

Azure OpenAI Serviceとは

 OpenAIのGPT-3&4、ChatGPT、Codex、DALL-Eなどの様々な生成AIモデルを、Microsoftが提供するクラウドサービスAzureを経由したAPIで利用が可能になるサービス。

▼詳しくはこちら
https://azure.microsoft.com/ja-jp/products/ai-services/openai-service

テーマ

 今回のハッカソンのテーマは、参加者に以下のいずれかを選んでいただきました。

  • Application to Support Student Learning: Develop a tool that enhances the learning process, making it more engaging and effective
  • Application to Assist Programmers: Create a solution that streamlines coding tasks, simplifies complex programming challenges, or improves the overall workflow for developers.

 (*)ベトナム・日本チーム双方への公平性を保つため、テキストコミュニケーションは原則すべて英語で行われました。

 多くのチームが「学生の学びをサポートするアプリケーション」を選んだようで、やはり身近でとっつきやすいテーマの方がアイデアが浮かびやすかったのかもしれません。

審査員・賛同企業

 ハッカソンの審査員はベトナム・日本それぞれ3名ずつで計6名に担っていただきました。

審査員(日本)

清水 俊博 氏
株式会社アイデミー
執行役員 CTO

東京工業大学工学部情報工学科卒。株式会社ドワンゴにて技術コミュニケーション室長、人事部長、サービス開発本部副本部長(R&D担当)などを歴任。併行して株式会社バーチャルキャストに出向しVPoE兼人事部長へ就任。2019年にSO Technologies株式会社に入社し、執行役員VPoEを経て2020年より現職。

紺屋 英洸 氏
株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部
オペレーションテクノロジー本部
プロダクト設計室

SIerで4年間働いた後、2008年にCA入社。営業・コンサルを経てオペレーション&テクノロジーの責任者に就任。CAの広告配信における社内システム開発や生成AIによる業務改善の上流設計を担当。AIオペレーション室も兼務で入り、CA全社の生成AI設計を推進中。

南澤 拓法 氏
日本マイクロソフト株式会社
Digital Startups & ISVs
Account Director

長野高専専攻科卒業後、2018年に日本マイクロソフト株式会社入社。Microsoft Azure の技術営業職として、主に大手法人のお客様向けに、アプリのモダナイゼーションや DevOps の導入を推進する活動に従事。また、大手建設会社や総合商社・ゲーム会社等幅広いお客様に対するエンタープライズブロックチェーンの導入支援も担当。現在はスタートアップ企業のビジネス・技術支援を推進。

審査員(ベトナム)

Nguyen Dang Huy(グエン・ダン・フイ) 氏
Sun* VIETNAM
Head of Technology Solution

Sun*の初期メンバーとして1500名の開発体制基盤の構築や同社の発展に大きく貢献した。エンジニア、テクニカル・リード、プロジェクト・マネージャー、事業部長など様々な役職を歴任し、現在はSun*ベトナムの最高技術責任者を務める。

Pham Van Toan(ファム・ヴァン・トアン) 氏
Sun* VIETNAM
AI Research Specialist

Sun*のAI研究チームの創設メンバー。同社がAI研究者のスペシャリストとして認定した最初の社員でもある。コンピュータビジョン、自然言語処理、信号処理、推薦システムなどさまざまな分野で30以上の科学論文を執筆し、Sun*のAIチームの研究成果を多くの国際会議で発表している。

Bui Quang Manh(ブイ・クアン・マイン) 氏
Sun* VIETNAM
AI Applied Research Team Leader

ハノイ工科大学日本語・IT学部卒業。大学3年生からSun*でインターンを始め、卒業後に正式に入社し、現在はAI応用研究チームのリーダーを務める。Azure OpenAI Serviceを活用した多くのプロジェクトに携わる。

Sun Asterisk Vietnam AIチームについて

 自社製品の開発やクライアントへの価値提供へつなげることを目的に、革新的な最先端技術を研究するR&Dチーム。
 現在は「AI/データサイエンス」・「サイバーセキュリティ」・「DevOps/SRE」という3つの分野を研究するかたわら、ベトナム最大のエンジニア向けナレッジ共有プラットフォーム「Viblo」や、Sun*のプロジェクト向けCI/CDサービスの開発・運営を担う。
 研究分野ではこれまで約40本のAI分野での論文が国際学会で承認されており、サイバーセキュリティに関する権威あるライセンスの数々を取得。さらにはホワイトハッカーとしても活動するなど、多方面での活躍を見せる。

賛同企業

参加者、総勢218名>>決勝進出者29名

 総勢218名(ベトナム162名、日本57名)が参加したハッカソン。予選ラウンドを経て、決勝に駒を進めたのは、両国3チームずつ、計29名となりました。

予選ラウンド

 予選ラウンドではベトナム25チーム、日本10チームが課題を提出してくれ、Sun*VNのAIチームが1週間かけて審査を進めました。

決勝ラウンド

 審査の結果、決勝へ進出したのは以下のチームでした。

日本:

  • Penguins
  • Data Dreamers caffeine coder
  • Data Dreamers Hawk

ベトナム:

  • Learn AI with Sun
  • Tech Thrive
  • IJKL

Penguins

 トップバッターはPenguins。初めてのハッカソン挑戦で決勝進出を成し遂げたチームです。

(※資料一部抜粋)

Learn AI with Sun

 ベトナムチームのトップバッターはLearn AI with Sun。楽しみながら英語学習を進められるアプリケーションを提案しました。

(※資料一部抜粋)

Data Dreamers caffeine coder

 日本チームの2番手を担ったのはData Dreamers caffeine coder。初心者が機械学習を継続しやすくするための学習サポートアプリケーションを提案しました。

(※資料一部抜粋)

Tech Thrive

 ベトナム側の2チーム目はTech Thrive。求める情報やタスク処理を適切に提供してくれるバーチャルAI-assistantを提案しました。

(※資料一部抜粋)

Data Dreamers Hawk

 日本チーム最後はData Dreamers Hawk。ゴールから逆算したタスク分解のアプリケーションを提案しました。

(※資料一部抜粋)

IJKL

トリを務めるのはベトナムチームのIJKJ。ドキュメントのサマライズやクイズを生成して学生の研究を手助けするアプリケーションを提案しました。

(※資料一部抜粋)

結果

 それぞれの発表終了後、ベトナムチーム・日本チームそれぞれの優勝チームを審査します。

日本優勝チーム:Data Dreamers caffeine coder


 日本側の優勝チームは「Data Dreamers caffeine coder」でした!賞金10万円が贈呈されます。

ベトナム優勝チーム:Tech Thrive


 ベトナム側の優勝チームは「Tech Thrive」でした!こちらのチームにも優勝賞金15,000,000VND(日本円で約10万円)が贈呈されました。

総評

 以下、今回のハッカソンで技術統括をつとめたSun*VN R&D team Unit ManagerのTran Duc Thang(チャン・ドゥック・タン) 氏より総評をいただきました。

Tran Duc Thang(チャン・ドゥック・タン) 氏 – 総評

 参加チームは、テキスト形式でのコンテンツ生成、ドキュメント内容の要約や翻訳など、GPTモデルの主要な能力を中心に多くの興味深いアイデアを発表してくれました。
 例えば、英語学習支援システム、日本語文法学習、漢字学習、JLPT(日本語能力試験)対策、コード解説、IT専門文書の解説などです。
 特に決勝ラウンドに進出した6チームはそれぞれユニークで類を見ないアイディアでした。

 ほとんどのチームが、今回のハッカソンがAzure OpenAI Services、ひいては生成AIモデルを使った開発を行う初めての機会だったと思いますが、短期間で多様なプログラミング言語を使用してプロダクトに統合することができていました。

 使用していた技術も非常に多様でした。多くのチームが、RAGというかなり新しくて難しいアーキテクチャの実装もしていました(LLMやOpenAIのことは知っていた人も多いと思いますが、おそらくRAGという言葉自体、ハッカソンに参加して初めて聞いたチームが多かったのではないでしょうか)。

 LangchainというLLMモデルの機能を拡張できるライブラリも取り入れて、また、Azure OpenAI Service以外の生成AIソリューション、例えばStable Diffusionをサービスに入れたチームもありました。さらに、音声処理や画像処理など、多様なAIソリューションを取り入れたチームもありました。

 チームによっては、AI技術だけでなく、Web開発に関連する技術ソリューションも巧みに使いこなしていました。
 Nodejs、Reactjs、Typescriptなどの先進的なWeb開発技術を使っていたチームも多く、これにより、多くのチームが完成度が高く、UI/UXが非常に優れたサービスを作り出し、インターネット上にデプロイして他の人にも使用してもらえるようにしていました。

 また、Azure OpenAI Serviceだけではなくて、Azureの他のサービス(データベース、サーバーなど)も使用して、デプロイするチームもありました。
 新しい技術を使用してサービスを開発し、初めて聞く技術さえも取り入れたことは、参加したほとんどのチームが持つ技術知識の確かな基盤と、新しい技術を迅速に学習する能力を証明しています。

xseeds Hubとは

 xseeds Hubは今回のハッカソンに参加してくれたようなハイレベルなテック学生と出会えるエンジニア採用プラットフォームです。

 実践的なIT教育に加えて日本語の学習を行っているのが特徴で、卒業時にはほとんどの学生がN3(*)を取得しています。

 (*) JLPT(日本語能力試験)のレベルのひとつ。「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる」と定義される。

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