外国人エンジニアを採用する企業が増えている背景

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日本国内で働く外国人エンジニアの数は、厚生労働省が発表している外国人雇用状況の届出状況で見られるデータのうち、専門的・技術的分野の在留資格を持つ外国人労働者数から推察することができます。
 
グラフを見ていただくとわかる通り、外国人エンジニアを含む専門的・技術的分野の在留資格を持つ外国人労働者数は2012年からの10年間で約3倍に増加しています。また2012年から2017年の6年間の増加数が約11万人であるのに対し、2018年から2021年の4年間での増加数が約12万人と、近年その増加率も上昇していることがうかがえます。
 
外国人エンジニアを採用する企業が増加傾向にある理由として、以下のような要因が考えられます。

  • 日本国内のIT人材不足
  • 優秀なエンジニアがオファー金額の高い企業に集中

日本国内のIT人材不足

外国人エンジニア採用を実施する企業が増えている背景として、国内でエンジニアが確保できず、外国人エンジニアの採用市場へ参入する企業が増えていることがひとつの理由だと考えられます。

経済産業省が発表している「IT人材需給に関する調査」によると、日本国内のIT人材は2030年までに最大で約80万人不足すると予測されています。

またハローワークが集計している職業別有効求人倍率からも国内のエンジニア採用市場の売り手市場度合いを推し量ることができます。

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情報処理・通信技術者の有効求人倍率は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で一時期企業側も採用枠を厳しくしたものの、コロナ禍の落ち着きと比例してこの2年ほどで再び売り手市場の傾向が強くなっています

専門性の高いエンジニアはオファー金額の高い企業に集中

国内エンジニアの売り手市場の傾向が強まるとともに、企業はオファー金額を上げることで人材確保を狙うようになります。

実績のない新卒人材の採用においてもその流れが出てきており、特に高いデジタル技術を持つ新卒人材に対して1,000万以上のオファー金額を提示する企業も現れ始めています。

その結果、国内の優秀なエンジニアや専門性の高いスキルを身につけたエンジニアは高額なオファー金額を提示する大手企業やメガベンチャーへ集中しています。一方で外国人エンジニアは国内に比べるとオファー金額を抑えつつ優秀な人材を確保することができるため、採用に対する予算を潤沢に確保することが難しい企業から人気を集めているのです。

外国人エンジニアを採用するメリット

外国人エンジニアを採用する企業が増えている背景として、国内のエンジニア獲得競争の激化を挙げてきました。しかし、外国人エンジニア採用には、国内のエンジニア採用の代替手段としてだけではないメリットがたくさんあります。この記事では以下の3つについて言及します。

  • 大規模な母集団に効率的にリーチできる
  • 優秀なエンジニアを採用できる
  • ダイバーシティアンドインクルージョンが推進される

①大規模な母集団に効率的にリーチできる

外国人エンジニアを採用する最大のメリットは大規模な母集団だといえます。ヒューマンリソシアの調査によると、世界93カ国のIT技術者は2,257万人。そのうち約40%をアメリカ、インド、中国が占めています。

また外国人エンジニア採用に特化したサービスを利用することで、自社に合うスキルや価値観を持つエンジニアに効率的にリーチすることができます。

ベトナムを中心とした世界各国の2,000名以上の外国人エンジニアの採用プラットフォームであるxseeds Hubを利用する企業の中には、国内のエンジニア採用活動と比べて10倍以上の応募数を獲得した例もあります。大規模な母集団の中から自社に合うエンジニアを見つけられるという点で、外国人エンジニアを採用するメリットは大きいのです。

②優秀なエンジニアを採用できる

優秀なエンジニアや専門性の高いエンジニアを採用しやすいというのも、外国人エンジニアを採用する上でのメリットのひとつです。 外国人エンジニア2

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の調査によると、各国のIT人材が日常的に勉強に費やす時間は日本が最下位という結果でした。外国人エンジニアの方が技術力の向上に対する意識が高いといえます。

また日本企業へ新卒で入社した外国人エンジニアで、新卒3年目にしてCTOへ就任するなど目覚ましい活躍を見せる例もあり、高いポテンシャルを持つ人材と出会える手段として外国人エンジニア採用は十分に期待ができます。

新卒3年目でグループ会社CTOに。マネーフォワード幹部候補生として活躍するxseeds Hub卒業生

③ダイバーシティアンドインクルージョンが推進される

組織の多様性が促進される点も、企業が積極的に外国人エンジニアを採用する理由として挙げることができます。

少子高齢化が進むにつれて注目され始めているのが「D&I(ダイバーシティアンドインクルージョン)」の考え方を取り入れた組織づくりです。最近では”公平性(Equity)”を加えて「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」という言葉を使用することも増えてきました。

これは女性管理職の割合増加や障がい者雇用、LGBTQ雇用など多様性を尊重した組織づくりを目指す姿勢のことを指し、外国籍人材の雇用も含まれます。

生まれ育ったバックグラウンドや価値観の異なる人々が合わさることで新たなイノベーションが生まれることを意図した組織作りの考え方であり、今後ますますこのような企業が増えていくことが予想されます。

外国人エンジニアを採用する際の注意点

企業が外国人エンジニアを採用する理由を紹介してきましたが、注意点もご紹介します。この記事では以下の3点について言及します。

  • 入社までにコストがかかる
  • コミュニケーションコストがかかる
  • 仕事観やキャリア観が異なる

①入社までにコストがかかる

日本に居住していない外国人エンジニアを採用する上で注意したいのが、国内のエンジニア採用と比べて入社までに時間や手間などのコストがかかる点です。

日本への移住に際して在留資格認定証明書就労ビザを取得する必要があったり、場合によっては住居の手配なども必要になります。そのため外国人エンジニアを採用する際には入社までにかかる期間を長く見積もった上で、入社手続きのサポートが手厚い採用サービスを利用するのがおすすめです。

就労ビザの取得や入社までに必要な手続きについてはこちらの記事で詳しく説明しています。

外国人エンジニアのビザ取得に必要な準備と入社フォロー施策をご紹介!

②コミュニケーションコストがかかる

日本での就業経験が乏しい外国人エンジニアの場合、日本語が流暢ではなくコミュニケーションコストがかかることが想定されます。業務上日本語でのやりとりが求められるのであれば、日本語能力を向上するための課題を出したり、オンラインで授業を受けてもらうなどの対策を取るのがいいでしょう。

また受け入れ企業側が伝わりやすいコミュニケーションを意識することも非常に効果的です。例えば以下のようなポイントを意識してみると良いでしょう。

  • 文章を短く区切る
  • わかりやすい単語へ変換する
  • 何度も伝える

外国人エンジニアの日本語能力についてはこちらの記事でも詳しく説明しています。

外国人エンジニアの日本語レベルを知りたい!日本語力を測る「JLPT」とは

③仕事観やキャリア観が異なる

せっかく優秀な外国人エンジニアを採用しても、自社に定着してもらえないとコストの方が大きくなってしまう場合があります。そこで注意しておきたいのが、外国人エンジニアは日本人と仕事観やキャリア観が異なるという点です。

1社に長く所属しステップアップすることを念頭に置くことが染み付いている日本人に比べ、外国人エンジニアは転職そのものがスキルアップだと捉える傾向にあります。そのズレを認識していないと、早期離職などのリスクにつながることがあります。

外国人エンジニアを採用したら、企業側の期待値をできるだけ具体的なキャリアステップに落とし込んで伝えることが大切です。

外国人エンジニアの受け入れについてはこちらの記事でも詳しく説明しています。

外国人エンジニアを新卒で受け入れる際のポイントは?よくある課題と注意点

外国人エンジニアを採用しやすい国・地域

では、優秀なエンジニアを採用しやすい国や地域はどこなのでしょうか?一般的に、現地の給与が日本国内の給与の50%を下回っている国や地域の外国人エンジニアは採用ハードルが低いと言われています。

それに基づいて、各国のエンジニアの平均年収データから採用しやすい国や地域を見てみます。

ベトナムやインドネシアが狙い目

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ヒューマンリソシアによる調査結果から抜粋

2019年の日本のエンジニアの平均年収は約580万円で世界ランキング18位。その半分以下の給与の国は、例えばベトナム(約200万円)やインドネシア(約100万円)などが挙げられます。(※payscaleの検索結果参照)

特にベトナムやインドネシアなどは政府が高度IT人材の輩出に力を入れているため、優秀な人材を比較的オファー金額を抑えつつ採用できる国だと言えます。

平均年収の上昇率にも注目

ベトナムやインドネシアが優秀なエンジニアを採用しやすい国として紹介しましたが、それが故に世界から注目され始めているマーケットでもあります。

その成長速度は平均年収の伸び率からも見て取ることができます。

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日本の給与上昇率が5.9%で20位にとどまる一方、ベトナムは給与上昇率7.9%で世界ランキング13位、インドネシアは11.8%で8位といずれも勢いを感じます。

現地の給与が日本国内の給与の50%を下回っていると採用しやすいと述べましたが、裏返すと現地の給与が日本国内の給与の50%以上になると、外国人エンジニアにとって日本は魅力的なマーケットとして移らなくなる可能性が高いということになります。

ベトナムやインドネシアの優秀なエンジニアを採用するには、今が参入のチャンスだと言えるかもしれません。

まとめ

外国人エンジニアという新たな市場へ参入する企業が増えている背景について考察してきました。国内のエンジニア採用に多くの企業が苦戦していることと思いますが、世界に目を向けることで全く違う景色が見えてくるかもしれません。未来に向けた組織づくりを目指して、外国人エンジニア採用を視野に入れてみてはいかがでしょうか?