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外国人エンジニアの受け入れや育成に関するノウハウを取り入れた研修を設計
– Sun*はxseeds Hubの運営会社であり、毎年xseeds Hub経由でBrSEやエンジニアを採用していますね。
はい。立ち位置はあくまでxseeds Hubに参加する企業の1社であり、学生の情報や受けられるサポートは他参加企業と同じです。なのでこれからお話しする内容も、外国人エンジニアを採用している企業が実施している新卒研修の一例としてご紹介できればと思います。
私はSun*に新卒で入社したメンバーへの研修全てを担当しており、その一環として、xseeds Hub経由で入社した新卒メンバーへの研修も行っています。元々ハノイ工科大学の客員教授を務めていた経験もあったり、xseeds Hub導入企業への受け入れサポートを行っていた経験もあるので、それらを通して培った外国人エンジニアの受け入れ・育成に関する知見やノウハウを盛り込んで研修を設計しました。
(編集注記①)外国人エンジニア向け研修の設計についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
(編集注記②)外国人エンジニアの受け入れについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
仮想プロジェクトで実践的な日本語を身につけてもらう
– xseeds Hub経由で採用した2022年度の外国人エンジニアに対してどのような研修を実施したのか教えてください。
2022年度は10名弱の外国人エンジニアが入社してくれました。研修期間は来日前と来日後に分かれていて、来日前は約10日間のオンライン研修、来日後は約2か月半のオフライン研修を実施しました。
当初は技術力向上を目的とした研修と日本語能力向上を目的とした研修を同じくらいの比率で行う予定だったのですが、実際は日本語能力向上を目的としたコンテンツ中心の内容へと方針転換しました。理由はxseeds Hub経由で採用した学生が想定よりも高い技術力を身につけていたからです。
日本語学習コンテンツの他には、日本企業で働く上でのマインドセットを身につけてもらうための課題や、ファシリテーションスキルを身につけてもらうための工夫なども行いました。
– それぞれお聞かせいただければと思いますが、まずは日本語能力向上のためにどのようなことを実施されたか教えてください。
大きくは2つです。1つ目は、ビジネスシーンで使われる基本的な日本語会話スキルを身につけるために日本語会話学習サービスを利用しました。毎日3時間ほど日本語会話学習に費やしてもらった上で、口頭での日本語会話試験も受けてもらいました。
2つ目に、エンジニアやBrSEとして必要な日本語での仕様書作成スキルを向上するための課題にも取り組んでもらいました。こちらは仮想クライアントを用意し、仕様書作成からプレゼンまでをロールプレイング形式で行いました。技術に関する知識を深めると同時に、日本語の読解力や文章力を伸ばしてもらうことが狙いです。
また仮想クライアントへのプレゼン時には”クライアントから質問を引き出す”ことを意識してもらうなど、実際のプロジェクトにおけるクライアントとのコミュニケーションを念頭に置いた設計にしました。
▼参加者が課題で作成した画面設計書の一部※サイトのイメージ画像含む
“メモを取る”ことそのものを課題にし、学習効果を深める
– それ以外に研修で実施した内容があれば教えてください。
ひとつ目は、日本企業で働く上でのマインドセットを身につけてもらうための課題です。具体的には、”メモを取る”ことを課題として提示し、取り組んでもらいました。学んだことをメモするという行為は日本人だと当たり前と感じられるかもしれませんが、国や地域によってはそのような習慣として馴染みがないことがあります。そのため、講義以外に自分で学習したことや日本で生活していく上で調べたことなどをメモし、日報という形でまとめてもらうことを課題にしました。(画像参照)
結果として、研修を通して1人あたり550〜750トピックスという質・量ともに予想を上回るアウトプットが出てきて、研修の学びを深めるのに効果的だと感じられました。
もうひとつは、朝会のファシリテーションを順番に行ってもらったことです。朝会では上述の日報を発表したり、その他の課題の進捗報告を行うのですが、そのファシリテーションを彼ら自身に行ってもらったのです。ファシリテーションのためには事前にアジェンダを考え、各メンバーの発言を促し、時には議論の流れをコントロールする必要があります。これらのファシリテーションスキルは実際の業務においても活かされていくのだろうと考えています。
言語の違いを尊重し、”伝える”意識を強く持つことがコミュニケーションの鍵
– 外国人エンジニア向けの研修を行う上で、工夫した点や気をつけた点を教えてください。
工夫したのは、チームで課題に取り組んでもらった点です。タスクを分担しやすくモチベーションの低下を防止できますし、お互いにタスク管理をする経験もしてもらえます。何よりも実際のプロジェクトはほとんどがチームで行われるため、より実践に近い経験を積んでもらうための工夫です。
外国人エンジニアだからこそ気をつけた点は、講義などで知識を与える際に背景や理由もセットで説明することと、具体例を示すことです。日本人同士であれば概念的な説明や抽象的な言葉だけで通じるような場面でも、言語の違いは思わぬところで障壁になります。通じないからと簡単な言葉だけを使うのではなく、説明の仕方を工夫し「理解してもらいたい」という意思を伝える姿勢が大切だと考えています。
また今回の研修を通して明確に日本人と外国人エンジニアの違いを感じたのが、評価に対するスタンスです。日本人は他者との相対的な評価を基準にしてパフォーマンスを改善していく傾向が強いですが、外国人エンジニアの場合、国民性によっては一方的に評価を求めてしまうケースも出てきます。そのためストレングスファインダーをこう取り入れ、自身の強みと弱みを客観視することの重要性も講義として実施しました。
ただし、これは一朝一夕で身につく感覚ではないため、講義に加えて研修期間中はできるだけ細かく頻繁にフィードバックを与えたり、途中評価を開示することで、他者からの評価を認知し改善策を考えてもらうサイクルを作るように工夫しました。
研修に参加した外国人エンジニアメンバーの声
– 最後に、研修に参加したメンバーの声もご紹介します。
Hさん
仕様書作成のチーム課題を通して、クライアントの要望に基づいた要件分析や提案など様々なスキルを学ぶことができました。課題は大変でしたが、チームで取り組むことができたのはとてもいい経験でした。
Mさん
朝会でそれぞれが学んだことを共有できたのはお互いの成長スピードを早めるという意味で、Sun*が掲げる7つの行動指針のひとつである「Go Fast」を体現するような内容だったと思います。共有内容もN1取得に向けた勉強方法からSIMカードの登録方法まで様々で面白かったです。
Tさん
ビジネスシーンで使われる日本語を学習できたことももちろんですが、仮想クライアントへのロールプレイング形式での課題を通して、これからの業務内容をより具体的にイメージすることができました。