STEP1:組織課題から逆算して人員計画を立てる

最初に注意喚起をしておきたいのですが、この記事を読んでいる人の中で「外国人エンジニアを即戦力として育成するために、何から手をつけたらいいかわからない」という状態の人がいたら気をつけていただきたいのが、いきなり手段(How to)から考え始めないようにしてほしいという点です。

育成は採用活動と切っても切り離せない領域です。そのため企業が最初に取り掛かるべきは、組織が抱えている課題から逆算して「どういう人材が必要なのか」を把握し人員計画へ落とし込むことです。特に新卒採用の場合は当人のファーストキャリアに大きな影響を与えます。採用する側もされる側も成長し合える環境を作るためにも、前提となる採用計画にしっかりと取り組んでいただきたいです。

STEP2:身につけてほしいスキルをリストにする

人員計画に見合った人材を採用できて初めて、育成のためのコンテンツ設計の準備に取り掛かります。

活躍してほしいシーンを3つ書き出す

まずは優先度が高い3つだけでもいいので、採用した外国人エンジニアに「活躍してほしいシーン」を書き出してみるのがいいと思います。そこから逆算すれば、活躍のためにどのようなスキルが必要なのかがリスト化しやすくなります。この時に注意すべき点は、スキルセットの言語化と会社全体の評価制度を紐づけることです。評価制度と連動していないと、スキルを身につけても正当な評価が受けられずフラストレーションが生まれるリスクになります。

基準を可視化し採用する企業側と、採用される外国人エンジニア側が目線合わせをすることで、期待値に対する認識の齟齬やフラストレーションのリスクを減らすことができます。もしコストや工数の兼ね合いで社内外研修などを準備することが難しかったとしても、彼らに身につけてもらいたいスキルセットが言語化されていれば、それを基準にOJTなどを通して育成することができるはずです。

以下にリスト化するべき活躍シーンの具体例を示します。

活躍シーン例1:開発進捗定例報告

外国人エンジニア育成

「開発進捗定例報告」の場面をイメージすると、以下のような業務をこなすためのスキルを身につけておく必要があることが分かります。

・担当タスクの状況報告
・関連する機能を担当しているメンバーのタスク状況報告
・進捗上の問題/課題/リスクの報告と相談
・仕様上の問題/課題/リスクの報告と相談

活躍シーン例2:画面/機能テスト

外国人エンジニア育成

「画面/機能テスト」を任せる場合は、以下のような業務を遂行するためのスキルが必要になることが導き出されます。

・テストケースの作成
・テストケースのレビュー
・テスト進捗の管理

外国人エンジニアと日本人エンジニアの価値観の違い

詳細なスキルセットのリスト化をおすすめする理由は、外国人と日本人が持つバックグラウンドが違うからです。その文化の違いが、日本人とは異なる価値観や仕事観につながることは頭に入れておいた方がいいでしょう。例えば、彼らと話をしていると日本人よりもキャリアパスや成長過程を会社から具体的に提示してもらいたいという傾向があることが分かります。

価値観や仕事観のギャップを意識せずに、日本人同士でなら伝わるような抽象的なやり取りで済ませてしまうと、コミュニケーションに齟齬が生まれてしまいます。身につけてほしいスキルセットはできるだけ具体的に分解し言語化すると、その後の育成コンテンツの設計もスムーズに行えます。

STEP3:入社前のスキルレベルを把握する

スキルセットの言語化ができたら、次は採用した外国人エンジニアの現状のスキルセットを把握します。Sun*では入社前にそのための面談をセットして、以下の項目についてヒアリングしています。

・日本語能力
・職種別のスキル感

日本語能力を測定する

言わずもがなですが、日本人エンジニアと外国人エンジニアを育成する上でもっとも大きな違いは日本語能力の差です。社内の公用語が日本語の場合、日本語能力はコミュニケーションの基本であると同時に学習のベースでもあります。

研修でインプットした内容やフィードバックをしっかり身につけてもらったり、その後の実務において情報を得ることができず孤立してしまったりしないよう、日本語能力を一定レベルまで引き上げることはとても重要です。入社前や入社後1ヶ月は、集中的な日本語学習のカリキュラムを用意するのもいいでしょう。

職種別のスキルレベルを測定する

職種別のスキル感に関しては、活躍してほしいシーンとスキルセットに照らし合わせていくつか質問をしてみるのがいいと思います。例えば、プロジェクトの目的を達成するために「どのような情報を」「どこまでの人と」「どのように共有しておくべきか」など、職種として必要な視点を持っているかどうかを判断できる質問を用意するといいかもしれません。

外国人エンジニア育成

STEP4:育成コンテンツを選定する

採用した外国人エンジニアのスキル感が把握できたら、いよいよ具体的な育成のためのコンテンツを設計していきます。ここまでステップがしっかりと行えていれば、あとは自社にとっての最適解を導き出すだけです。

コストパフォーマンスで比較する

どのような育成コンテンツを準備すべきかは、コストパフォーマンスの観点から判断できます。言語学習も含めて、社内教育にかけられるコストと外注した際の費用を比較し、何にどれだけ時間と費用をかけられるのかを精査していきます。

Sun*では言語学習を外注し、スキル研修を社内で行い、その後OJTを実施し実務を通してスキルを伸ばしていってもらうという設計にしています。そのため、これ以降は社内研修とOJTについての考え方を中心に紹介します。

STEP5:ゴールに基づいて研修を設計する

研修はとりあえず実行すれば良いわけではなく、なんのために実施するのかが大事です。研修のゴールを達成するために意識していることを紹介します。

研修のレベルを調整する

外国人エンジニアを数多く採用する場合には、社内研修のレベルをどこに設定するかがまず重要です。あくまで教育が目的なので、レベルを上げすぎないようにすることが大切です。Sun*では採用した外国人エンジニアのスキルセットを並べた時の中央値より少し下くらいのレベルで設定しています。優秀な人に関しては、想定したスキルを身につけていると判断した場合、前倒しでOJTに進んでもらい、早めに実務を経験してもらうことが前提です。

研修とはあくまで足りてないスキルを最低限インプットするためのフェーズであるため、成長具合に合わせて期間を調整することも、即戦力として活躍してもらうための有効な手段だと考えています。

研修でのアウトプットを評価する

研修はあくまで一定のスキルを身につけてもらうための期間なので、成長具合を測定することも研修を実施する上で非常に重要です。研修では課題ごとにアウトプットを出してもらい、評価をつけ、フィードバックを渡します。そのためにアウトプットを定義することが大事です。

また少し個人的な話ですが、スキル測定と同時に大事にしているのが人柄です。具体的には「責任感」と「素直さ」の2点を持っているかどうかです。任された仕事をやり遂げる責任感と、他人の意見を受け入れる素直さがある人は必ず成長します。場合によっては研修のコンテンツとしてロールモデルになるような先輩社員に、マインドセットに関する講義を行ってもらうのもいいかもしれません。

STEP6:OJTで現場と連携する

研修期間が終了したら、次は実務を通してさらにスキルを伸ばしてもらう段階です。Sun*ではそのためにOJT期間を用意しています。

実務を通してさらに成長する

OJTでは実際のプロジェクトに入り、チームリーダーやプロジェクト責任者の下で実務を通して経験を積みます。研修で必要なスキルをインプットするのも大切ですが、それを実務でアウトプットすることで成長率は格段に上がります。その意味で、個人的には育成領域においてもっとも力を入れているのがOJT期間です。

基本的には評価も受け入れ先の責任者に任せています。ただ完全に手が離れるわけではなく、研修で学んだことを活かせているかの判断は育成担当者がした方がいいと思います。とはいえOJTは育成担当から現場への引き渡し期間という位置付けでもあるので、これから先彼らが活躍するためにどのようなプロジェクトにアサインすべきか、どのような経験を積むべきかは受け入れ先の責任者と教育担当者が相談して決めるべきだと思います。

受け入れ先を決める

特に初めて外国人エンジニアを採用する場合には、OJT期間を含め受け入れ先をどうするかは少し悩むポイントかもしれません。そこを考える上でも、STEP2で言語化した「活躍してほしいシーン」のリストが役立ちます。例えば基本設計に関するスキルを伸ばしてもらいたい場合は、その領域について深い知識を持ち実際に手を動かしている方が適任でしょう。

外国人エンジニア育成

まとめ

外国人エンジニアを即戦力として育成するための6つのSTEPをご紹介しました。優秀なエンジニア採用の競争が激しくなる昨今、組織のグローバル化の波はますます大きくなります。グローバル化へのスタートダッシュを切って差をつけるためにも、本記事で紹介したようなステップを踏むことで、優秀な外国人エンジニアを即戦力として育成するための準備を整えてはいかがでしょうか?