外国人エンジニアを迎え入れる準備をしよう

昨今、外国人エンジニアの採用が増えている背景にあるのは、IT人材の不足です。みずほ情報総研の2019年の調査によれば、IT人材は今後増加するもののIT需要の伸びのほうが大きく上回り、2030年には最大で78.7万人不足するといわれています。
現在は国を挙げてDX推進が叫ばれていますが、IT需要が伸びれば伸びるほど、人材不足が深刻化していくと予想されるのです。
DXの必要性は特定の企業に限った話ではありませんから、どんな企業も今後、外国人エンジニアを迎え入れることになる可能性が高いでしょう。

外国人エンジニアを採用するときのハードル

実際に外国人エンジニアを採用するときにハードルとなるのが言語です。そのほか、企業で働いてもらうための在留資格(就労ビザ)の取得もひと手間です。これらについて、簡単に押さえておきましょう。

日本語力

日本国内を拠点にしている企業であれば、業務のやりとりは日本語で行われているケースがほとんどです。一部の大手企業では社内の公用語に英語を採用していますが、まだまだ中小・ベンチャー企業に浸透しているとはいえません。そのため、外国人エンジニアにはそれなりの日本語能力を求めることになります。

参考までに、令和2年時点で、国内の外国人に対する日本語教育実施機関は2,516箇所。学習者は16万921人です。学習者の約6割は留学生でした。また学習者の出身地域は約8割がアジア地域であり、1位が中国、2位がベトナムです。
日本への留学経験があるアジア系の外国人であれば、日本語を習得している可能性が高いといえるでしょう。

コミュニケーション

語学力とは別に、国ごとの習慣や文化、宗教の違いからコミュニケーションに齟齬が生まれてしまうかもしれません。日本では当たり前に思っている礼儀が、外国人にそのまま通用するとは限らないのです。

例えばベトナムは多民族国家であり、政治体制は一党独裁の社会主義。信仰されている宗教は8割が仏教です。日本と共通している部分もあれば、異なる部分も数多くあります。
これらの違いをあらかじめ学び、お互いがスムーズなコミュニケーションができるような工夫が必要です。

就労可能な職業の種類

外国人労働者の中でも、定住者や永住者、日本人の配偶者の場合は就労できる範囲に制限はありません。
しかしそれ以外の外国人は、日本で就労可能な職業やその条件が限られています。エンジニアの場合は「技術・人文知識・国際業務」のうち、「技術」の在留資格が当てはまり、申請によって就労ができるようになります。

この在留資格の取得で重要なのは、就労する外国人自身が大学などで学んだ技術・知識と、実際に従事する業務が密接に関わっているかどうかです。エンジニアを採用する際は、採用者がこれらの在留資格を取得できるのかどうか、しっかり見定めましょう。

就労ビザの取得

上記の通り、外国人が日本企業で働くことが決まったら、在留資格の取得が必要です。「就労ビザ」とも言われますが、これは在留資格の通称であり、同じ意味です。

企業側はそもそも採用者が就労ビザを取得できるかどうかをしっかり確認して、その上で雇用契約を締結し、改めてビザを取得する申請手続きを行ってもらわなければなりません。

就労ビザの取得に必要な期間はその人によってまちまちです。あらかじめ「在留資格認定証明書」という事前審査の書類を発行しておけばビザの発給はスムーズですが、在留資格認定証明書を発行してもらうには1~3ヶ月ほどかかるので、いずれにせよ申請期間を見越して内定を出さなければなりません。

内定後のフォロー

無事就労ビザを取得して内定を出した後は、日本人とは異なるフォローが必要になります。大きくは住居の確保と、日本語教育の2つです。

まず住居については、外国人であることや保証人がいるかどうかなどによって、賃貸物件を借りられないケースがあります。企業が全面的にバックアップをして、外国人エンジニアが安心して日本で働ける環境を整えてあげましょう。

日本語レベルが足りていない場合は、日本語教育を継続的に行うことも重要です。スクールを紹介したり、社内で日本語研修を実施したりするなど、日本語レベルを高められるような取り組みを検討しましょう。

外国人エンジニアの日本語のレベルを知る方法

以上のように、外国人エンジニアの採用にはいくつかのハードルがあります。特に就労ビザの取得や内定後のフォローは避けようがありませんから、会社として受け入れ体制や制度をしっかり整えておきましょう。
一方で言語やコミュニケーションに関するハードルについては、外国人エンジニア本人が日本語を習得しているにかどうかにかかっています。面接段階で日本語レベルを見定める方法をしっかり押さえておきましょう。

日本語力を測る「日本語能力試験」の級数を見る

日本語能力試験、通称JLPT(Japanese Language Proficiency Test)の級数を見れば、外国人エンジニアの日本語能力の高さを測れます。
JLPTは年に2回、7月と12月に行われており、受験者数は令和3年7月で約33万人でした。レベルはN1~N5の5段階で、内訳を簡単に説明すると以下の通りです。

N1:幅広い場面で使われる日本語を理解できる
N2:日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、幅広い場面で使われる日本語をある程度理解できる
N3:日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる
N4:基本的な日本語を理解できる
N5:基本的な日本語をある程度理解できる

企業で働く場合は、一般的にN1~N2のレベルが求められます。ただしN1合格にするには新聞や評論の文章を理解し、話の流れや細かな表現意図の理解まで必要です。ニーズの高いIT人材にここまでのレベルを求めるのは、とても難易度が高いのが現実でしょう。

N3レベルでも業務をスムーズに遂行できるケースは多いですし、実際に働いてもらうときに必要なのは会話を通じたコミュニケーション能力です。面談ではJLPTの成績証明書を確認するだけでなく、会話をしたときの感触も重視してみてください。

現地の大学で日本語を学んでいたかを確認する

外国人が現地の大学で日本語を学んでいるケースもあるので、面接の際に聞いておきましょう。
例えば当社(Sun*)も、ベトナムの大学で現地の学生に対して、累計600時間ほどの日本語教育を行っています。日本での就労を想定して、内定後のビジネスマナーなど320時間のカリキュラムで実践的な取り組みにまで踏み込んでいるのも特徴です。

現地の大学で実践的な日本語教育を受けた経験がある学生なら、実際に働き始めたときにもスムーズなコミュニケーションを取りやすいはずです。

入社後は日本語教育をサポートしよう

この記事では内定後の日本語教育の必要性についてすでに簡単に触れましたが、大切なのはその具体的な取り組み内容です。ただ単に日本語を学んでもらおうとするのではなく、できるだけ本人が意欲的に取り組めるような工夫をしましょう。

例えばJLPTの合格者にはインセンティブを与えるなど、新たな社内制度を取り入れるケースもあります。日本語教育のためのe-ラーニングの導入、日本語教師を招いての教育に力を入れることもおすすめです。
また、円滑なコミュニケーションのために日本人の社員が英語検定試験受験を目指す方法もあります。グローバル言語である英語の習得は日本人社員にとって確実にメリットがありますし、採用した外国人が英語圏外の人なら、日本人と外国人お互いが母国語以外で話すことによって、社内の言語コミュニケーション能力のアップが見込めるでしょう。

まとめ

外国人エンジニアがビジネスレベルの日本語能力を習得しているかどうかは、採用を決める上では大きな指標の一つになります。採用面談の際は必ずJLPTの級数や現地大学で日本語教育を受けているかなどを確認した上で、実際のコミュニケーションを通して日本語能力を測るのが大切です。

そのほかにも、外国人エンジニアの採用にはいくつかのハードルがあります。xseeds Hubなら、提携大学の学生に対して独自のカリキュラムで日本語教育を実践しているだけでなく、内定後の就労ビザの取得や定着支援など数々のサポートも展開しています。外国人エンジニアの新卒採用をお考えの方はぜひご検討ください!

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