エンジニア採用の現在の状況

現在の日本のエンジニア採用は、完全に売り手市場です。経済産業省の調査によれば、日本のIT人材は2030年に最大79万人不足するといわれています。

「IT人材の不足」といっても、エンジニアが減っているわけではありません。DXの推進など、企業のデジタル化が求められる社会的風潮も相まってどんどんITの需要が増え、市場規模そのものが大きくなっているのです。
デジタル人材の獲得に向けて、大手企業ではエンジニアに高水準の報酬を設定する例も少なくありません。市場の競争はますます厳しくなっていくでしょう。

そんな中で増えているのが、外国人エンジニアの採用です。外国人雇用状況のデータを見ると、2011年時点で情報通信事業に従事する外国人労働者の人数は約2万6000人。これが2021年時点では約7万人にまで増えています。
国内のみでは補えないエンジニア不足を、外国人エンジニアが担ってくれる可能性が大いにあるのです。

国内のエンジニア不足を解消する外国人エンジニアの存在

実際にエンジニアを採用する際には、いくつかの課題に直面します。優秀なエンジニアの採用が難しいのは前述の通りで、その結果開発を内製化できずに悩んでいるCTOの方は多いはずです。
かといって外注をするにしても、ベンダーやSESを利用するとどうしてもコストがかさみます。現在は海外のオフショア開発が盛んですが、社内にITのノウハウがない中で海外に拠点を構える、あるいは海外のベンダーとやり取りをして開発をするのは、やはり高いハードルがあります。

上記の観点を踏まえても、海外のトップ大学で学んだ外国人エンジニアの存在は頼もしいものです。アジア市場への進出や、組織のダイバーシティ化の促進にも一役買ってくれることでしょう。

外国人エンジニアを採用する代表的な手法

外国人エンジニアを採用する方法は主に5つです。基本的に日本人採用とあまり大きな違いはありませんが、外国人ならではのポイントもありますので押さえておきましょう。

(1)外国人エンジニア専門の人材紹介サービス

最もおすすめなのは、外国人エンジニア専門の人材紹介サービスの利用です。中途・新卒を問わず、幅広く人材を募集できます。エージェントが間に入ることによって、自社に合った人材とのマッチングや選考プロセスをスムーズに進められるのもメリットです。
採用イベントを行っている企業もありますから、機会があれば積極的に参加してみましょう。

人材紹介サービスを使うときのポイントは、エージェントに自社の魅力や組織体制、求めるターゲットのスキル・人柄のイメージをきちんと伝えることです。

(2)外国人エンジニア専門の求人媒体

人材紹介サービスはアクティブに人材を探す手法でしたが、求人情報を媒体に掲載して、応募を待つ方法ももちろん有効です。
条件に合った人材を国内外に向けて幅広く求められる点では、人材紹介サービスと併用したいところです。インターン生の採用にも活用できます。

ダイレクトにスカウトメールを送れる求人媒体もあるので、応募状況に合わせて機能をフル活用するのがコツです。

(3)フルリモートで海外から参加できる業務委託サービス

「リモートで働ける人材がほしい」「週3日など限られた時間の勤務でも構わない」といった場合は、フルリモートの業務委託サービスを活用するのも一つの方法です。場所を問わず働けますから、海外から登録しているエンジニアもいます。

登録者の多くはフリーランスや副業で働くエンジニアです。プロジェクトベースで、柔軟性のある採用ができます。

(4)リファラル採用

社内にすでに何人か外国人エンジニアが働いている場合は、リファラル採用をする方法もあります。エンジニアが自分の知り合いのエンジニアを会社に紹介するので、信頼できる人材を採用しやすいのがメリットです。

リファラル採用に対するインセンティブ制度などを設けておけば、エンジニアにより積極的に人材を紹介してもらいやすくなるでしょう。自社の採用サイトを強化しておくなど、採用広報・ブランディングに努めるのも重要です。

(5)インターン型採用

外国人留学生をインターンシップ生として迎える手法もあります。インターンシップはあくまで研修・教育が目的ですが、留学生に自社の業務内容や文化、ビジョンなどを直接伝えられるので、インターンシップ後に入社してもらいやすくなります。
外国人の受け入れ体制を社内に構築する上でも、まずはインターンシップを活用するのは良い方法です。

外国人エンジニア専門の人材紹介を利用するメリット

5つの採用手法についてご紹介しましたが、編集部が最もおすすめするのは人材紹介サービスの利用です。メリットについて、より詳しく見てみましょう。

(1)母集団形成を任せることができる

採用活動の中でも特に重要で難易度が高いのは母集団形成ですが、人材紹介サービスならここをお任せできます。エージェントが候補者に対して自社をPRしてくれるので、採用コスト削減にもつながります。

ただし、いくらエージェントに任せられるといっても、候補者にとって自社が魅力的に見えなければ上手くマッチングできません。採用広報は会社が主体となって積極的に行い、相乗効果を狙いましょう。

(2)人事の採用担当者の工数を削減できる

忙しい採用担当者の工数を削減できるのも大きなメリットです。人材をマッチングしたら面談日のセッティングなどこまごまとした業務が発生しますが、人材紹介サービスなら内定までの一連のプロセスを任せられます。
特に自社の人事担当者が別の業務も兼務していて忙しいといった場合は、かなり役立つでしょう。

(3)成果報酬型なのでリスクが低い

人材紹介サービスと求人媒体の大きな違いは、成果報酬型だという点です。紹介された人材を企業が採用した時点で初めてエージェントに対してフィーが発生するので、コストに無駄がありません。
仮に採用者がすぐに会社を辞めてしまった場合も、返金保証を受けられるケースがあります。より低リスク、低コストでの採用を目指せるのは、うれしいポイントです。

(4)入社後のフォローの仕方を具体的に聞ける

外国人エンジニアの採用には、在留資格の取得手続きや住宅の確保など生活基盤の構築といった、日本人エンジニアにはないさまざまな受け入れ準備が必要です。
外国人専門の人材紹介サービスはエージェントもプロですから、外国人の受け入れについて何か疑問や不明点があったらすぐに相談をして、適切な対応ができます。特にこれまで外国人労働者を受け入れたことがない、社内にノウハウを持った人もいない企業の場合は、頼れる存在となるでしょう。

(5)海外に行って現地での採用活動ができる

エージェントと二人三脚の採用活動を行えば、現地の採用イベントに赴いたり、海外在住の人材と直接面接を行ったりすることもできます。
現在はWebを通じて気軽に面談できる時代ではありますが、やはり対面だからこそわかるリアルな空気感やそこから得られる情報は、より精度の高い採用をするために有益です。

外国人のエンジニア採用の時間軸と選考プロセス

実際に外国人エンジニアを採用する際、選考から内定、入社までにどの程度の時間を要するものなのかは気になるポイントです。また選考プロセスの内容についても、当編集部が運営するxseeds Hubを利用した場合を例にご紹介します。

外国人の学生エンジニアが就職活動をする時期

海外の大学から新卒で外国人エンジニアを採用する場合、狙う大学の卒業時期と就職活動を始めるタイミングを把握しておく必要があります。xseeds Hubが提携しているハノイ工科大学やダナン工科大学、ベトナム国家大学ホーチミン校、マレーシア工科大学などの卒業シーズンは、毎年6~8月です。
企業は卒業から逆算して1年半~2年ほど前には内定を出す想定で動き出し、約1~2ヶ月の間に選考会を実施することになります。

外国人エンジニアを採用する選考プロセス

xseeds Hubの場合、選考プロセスは「選考会」という形で3日間かけて行われ、最初は現地での会社説明会から始まります。(※新型コロナウイルス感染症の状況によっては対面での選考会が難しいため、説明会も含めて、選考会のフローがすべてオンラインが主軸となっています。全体に要する期間は、やはりオフラインでの実施同様、全行程を含めて3日間で完結します。)

1日目:会社説明会(18:00-19:00)※例:ベトナム現地時間
2日目:面接会(9:00-18:00) ※休日の土・日曜日を活用
3日目:最終面接(9:00-18:00) ※休日の土・日曜日を活用
3日目当日〜翌日内定通知&受諾
(※記載の時間は目安です)

適宜、コロナの状況も含め説明会の開催方法は変更が余儀なくされるので、気になる方はお問い合わせください。

会社説明会の内容

会社説明会の内容は日本の一般的な企業が行う会社説明会と大差ありません。企業の事業内容や詳しい求人情報、福利厚生の内容、目指せるキャリアパス、社内の雰囲気、先輩社員がどのように働いているのかなどを説明します。その後は、参加者からの質疑応答の時間を設けます。説明会や面接のフローに際しては、ベトナム語や英語の逐語訳が可能な通訳が同席するよう手配致しますのでご安心ください。
説明会にかかるのは1時間程度が目安です。説明会の後は懇親会などを開くケースも多いです。

外国人エンジニア採用枠の新卒面接の内容

2日目の面接枠は最大24枠で、制限時間は1枠30分です。1枠あたりの面接人数については、企業様のご要望に応じて1~2名まで設定可能です。最大48名の候補者の中から、最大12名の通過者だけが3日目の最終面接に進みます。
最終面接は個別面接で、成果物を用いたプレゼンやプログラミングテストなどの実施も可能です。
最終面接後、すぐさま内定通知を出すことになります。学生が内定受諾をしたら、現地で行う場合は内定者懇親会などを経て選考プロセスは終了です。

学生エンジニアとの採用面接は日本語でも大丈夫?

面接対象者の学生は日本語を学んでいるため、その勉強の成果を推し量る意味でも、自己紹介などは日本語でのプレゼンを求める企業様もいらっしゃいます。ただし、面接会に参加をする学生は、日本語をゼロから学び始めて2年ほどの学生がほとんどのため、多くはネイティブの日本人の会話についていけるレベルまでは達していません。(このあたりは、読者の皆様が英語をゼロから学び始めて2~3年後に、英語のネイティブスピーカーの方と話す際のハードルの高さから想像しやすいのではないでしょうか)。

また、xseeds Hubで日本語を学んでいる学生は、基本的には各国内のトップ理系大学で朝から晩までコンピューターサイエンスを主軸に学んでおり、選考会時の日本語レベルはそこまで高いとは言えません。そのため、日本人特有の慣用句や俗語、難しい言い回しなどは特に伝わらない可能性があるので、注意しましょう。

また学生によっては、質問や説明の意図を汲み取るのが難しかったり、自分の考えを上手く言葉にできなかったりするケースもしばしばです。せっかくの面接の機会ですから、齟齬がないよう、学生の意図や考えなど、より深い思考を推し量りたい場合は彼らの母国語で回答をしてもらい、通訳者を介して内容を理解することをおすすめします。

日本に来日する内定式までの流れ

選考を実施した時期にもよりますが、学生が内定受諾をしてから内定式までには1年半〜2年間ほどのリードタイムがあります。前述の通り海外の大学は卒業が6~8月頃に設定されていますが、日本の4月入社に時期を合わせたい場合は、あらかじめ調整することも可能です。

また卒業してから実際に渡日して企業に入社(内定式に参加)する場合でも、最低でも1~2ヶ月程度のビザ取得や渡日にあたって必要な作業が必ず発生します。人によって就労ビザの申請状況が異なるケースがあるため、ある程度余裕を見ておきましょう。

リードタイムが長い分、企業側から定期的に学生へコンタクトを取り、入社へのモチベーション維持に努めるのがおすすめです。

エージェントの内定後フォロー

xseeds Hubは、内定者に対していくつかのフォローを行います。まずは、内定から入社までのリードタイムに日本語能力検定試験対策や会話対策を実施。入社するまでに、内定者の日本語レベルがしっかり向上するように日本語を継続的に学んでもらいます。夏季休暇中には基礎IT研修を行い、技術レベルの維持にも配慮します。
実習内容は毎月レポートとして学生から企業に提出されるので、しっかりチェックしてください。

入社後は、企業様・内定者との定期面談を通して定着をご支援します。初めて日本で働く内定者、初めて外国人エンジニアを受け入れる企業様の間では、コミュニケーションミスも起こりがちです。そんなとき、xseeds Hubがこれまで培ってきたノウハウを駆使してしっかりサポートします。

日本人の学生を新卒採用する時と何が違う?

ここまでは選考のプロセスをご紹介してきました。次は受け入れ体制について確認していきましょう。
外国人エンジニアを受け入れる際には、日本人学生の入社とは異なる特別なコストや配慮が必要です。あらかじめ内容を把握しておき、スムーズに受け入れられるように下記にご紹介します。

ビザの手配など想定されるコスト

最も大きな違いは、日本への入国と就労ビザの取得が必要なことです。どちらも渡航費用とビザ取得の費用がかかり、一般的に企業側が負担します。また、入国の際は健康診断費用も忘れないようにしておきましょう。
外国人労働者は住居の確保に手間取ってしまうケースが多いので、渡日する前に物件を法人契約して、住居も用意しておく必要があります。

受け入れ体制の準備

そのほかにも、受け入れのためにはさまざまな準備があります。

・ライフライン契約(電気、水道、ガス、インターネット)
・洗濯機や冷蔵庫、電子レンジなど生活に必要な家電
・自治体への住民登録
・給与口座の開設
・携帯電話の契約

さらに内定者が渡日する当日は、空港で間違いなくピックアップできるようにもしておきましょう。
日本人社員を採用するのに比べると大掛かりでコストがかかりますが、内定者が不安なく就労できるようにするには、欠かせない要素です。xseeds Hubではこれらの準備をサポートするパートナー企業の紹介も可能なので、お困りの際はぜひご相談ください。

まとめ

外国人エンジニアの採用が加速している現在、まずは自社が実施しやすい手法から採用活動を進めてみるのがおすすめですが、フォローアップや知見の蓄積からまずは人材紹介サービスを活用してみましょう。
xseeds Hubでしたら、外国人エンジニアの採用を成功させるために伴走させて頂くことが可能です。

今回ご紹介した選考プロセスや受け入れ準備の情報も参考にしながら、外国人採用を効率的に進めてみてください。