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AIは開発組織にどのような変化をもたらすのかーイベントレポート後編

【登壇者】

株式会社マネーフォワード
取締役執行役員 D&I担当
CTO 中出 匠哉 氏

2001年ジュピターショップチャンネル株式会社に入社。ITマネージャーとして注文管理・CRMシステムの開発・保守・運用を統括。2007年にシンプレクス株式会社に入社し、証券会社向けの株式トレーディングシステムの開発・運用・保守に注力。その後FXディーリングシステムのアーキテクト兼プロダクトマネージャーとして開発を統括。2015年に株式会社マネーフォワードへ入社し、Financialシステムの開発に従事。2016年にCTOに就任。

株式会社サイダス
取締役CTO 吉田 真吾 氏

携帯サービスや証券会社基盤のシステム開発を経て、2012年からAmazon Web Servicesのトップパートナー企業でエバンジェリスト兼ソリューションアーキテクトとして活動。株式会社セクションナインを設立し代表取締役就任した後は、AWSの導入コンサルティングやDevOps支援の傍ら、書籍の執筆やイベントで講演、コミュニティの育成を推進。これらの活動を経て、2018年6月より株式会社サイダスへ取締役CTOとして参画。2019年3月にAWS Serverless HEROに認定。証券システムなど多くのシステムやインフラ基盤の開発・運用に従事し、クラウドやモダン・アプリケーションに精通。

株式会社インフキュリオン
執行役員 Embedded Fintech事業部長
末澤 慶海 氏

博報堂グループのデジタルエージェンシーspiceboxを経て、2017年よりインフキュリオンに参画。2019年6月に執行役員就任。CEO室担当役員としてEmbedded Fintech事業の立ち上げ、コーポレートコミュニケーション・HRBP部門のマネジメントを担当。自社サービスのDevOps組織をゼロから立ち上げる。2023年4月よりEmbedded Fintech事業の事業統括を担当。

株式会社Sun Asterisk
CTO’s 斎藤 幸士 氏

情報通信系研究所などでプログラマとして勤務後、会社立ち上げ。出資企業だったベーシックへ入社し、マーケティングオートメーションツールの開発・採用・事業推進などの分野で活躍。「ferret One」開発責任者。2007年、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「未踏ソフトウェア創造事業」に採択され、ビジネスシーズのプロトタイプを開発・発表した経験を持つ 。現職では大手企業・スタートアップの助っ人CTOとして従事。

外国人エンジニアを開発組織へ迎え入れたきっかけ

最初のトークテーマは「それぞれの開発体制 過去・現在」。海外人材を開発組織に迎え入れることとなった経緯や、どのように決断を下したのかを聞きました。

外国人エンジニアを採用するに至った経緯

斎藤
「なぜ外国人エンジニアを採用したのか」と聞くと「優秀なエンジニアを国内で採用するのは難しい」という、今やほとんどの企業に共通する課題が答えになると思っています。なので今日は一歩踏み込んで、外国人エンジニアの採用というハードルをどのように乗り越えて決断したのかという切り口で伺えればと思います。末澤さんはいかがですか?

末澤
そうですね、なぜ始めたかでいうと、シンプルにいろんな人がいた方が組織として面白いだろうなと。自分自身がマーケティングからフィンテックという異なる業界へ移ってきたことで、組織に変化をもたらすことができたと実感しているのもあります。最近ではDE&I(Diversity, Equity & Inclusion)という、多様性を尊重することの重要性が注目され始めていますが、キャリアも人種も多様な組織の方が面白そうだというのが踏み切った理由です。

斎藤
吉田さんはxseeds Hub経由で3年連続採用いただいていますが、どのような経緯で外国人エンジニアを採用するに至ったのでしょうか?

吉田
当社はxseeds Hubという事業ができた初期の頃から利用しているのですが、実は初めて外国人エンジニアを採用したのはそれよりさらに2年ほど前になります。知り合いが外国人エンジニア採用のサービス検証を行うというので声をかけてもらい、ベトナム人のエンジニアを新卒で2名採用しました。彼らを採用した理由は2つで、1つは圧倒的に日本で働きたいという意欲を持っていたこと。もう1つはインターンや大学のプロジェクトで実際に自分たちで作ったものを見せてくれて技術的な会話もできたことです。人柄とスキル面を合わせて考えた時に、彼らはきっと活躍してくれるだろうし、活躍できなくてもそれを背負ってあげようと決断ができました。その成功体験があったからこそ、今もxseeds Hubを利用して継続的に外国人エンジニアを採用しています。

斎藤
ありがとうございます。マネーフォワードさんはエンジニア組織の約40%が外国人エンジニアとのことですが、外国人エンジニアを採用したきっかけは何でしたか?

中出
実は最初から綿密に計画を立てていた訳ではなく、Sun*取締役の服部さんに「Sun*のハノイオフィスを見に来てください」と誘われて見学しに行ったのがきっかけです。そのタイミングで、xseeds Hubもラボ型開発(Sun*が提供する開発支援サービス)も両方やろうと瞬間的に決めたという感じでした。なので計画してたとかではなくて、見に行って「あ、良さそうだからやってみよう」と思って決めたって感じでしたね。

外国人エンジニアが開発組織にもたらす変化

斎藤
サイダスさんはxseeds Hub経由で採用した方ですでに入社された方もいますよね。その方たちはどうですか?

吉田
コロナの影響で渡航が遅れていたのですが、今年の3月に5名入社しました。現状は教えたことを吸収してくれている段階ですね。ここからはバグの解析やアプリケーションの仕様の把握、あるいはどこに新機能を足してほしいだったりとかの本質的なコミュニケーションが取れるようになってもらいたいと思っています。今はそのために、一人ずつ日本人のリーダーにつけてオンボーディングさせています。リーダーとしても初めて受け入れるため言語の面などで不安を覚えていたりもするので、リーダーのケアもしっかりしてあげるのが重要だと感じています。

斎藤
外国人エンジニアを採用することで、日本人同士のハイコンテクストのコミュニケーションを改めたりなど、開発プロセス自体を見直すきっかけにもなりますね。

中出さんはインタビューでも外国人エンジニアの採用を始めたことで母集団が一気に広がったと語られていますが、実感としていかがですか?

中出
0が1個増えるくらいの感覚です。特に開発組織の英語化に乗り出してからは顕著でした。日本語を覚えて働いてくれようとする外国籍の方もいらっしゃいますし、それだけでも国内のみの採用より2倍ほど採用できるというイメージですが、それこそ日本語のバリアを外すと0が1個増えるくらいの感覚があります。海外には、日本のことを好きで安全なイメージがあるから日本で働きたいと思っている人はたくさんいますが、日本語ができないと活躍できないとか、日本人の方が昇進しやすいなどを懸念している部分もある。日本人も英語ができないと活躍できないっていうフラットな環境にすることで、より海外からの流入は増えたかなと思います。

イベントレポート0510

外国人エンジニアの受け入れで何を意識しているか

イベントでは、初めて外国人エンジニアを採用する際の受け入れや内定期間中のフォロー施策についても話されました。

外国人エンジニアを”活躍させる”という覚悟

斎藤
インフキュリオンさんは今年xseeds Hubで採用されてまだ入社前とのことですが、初めて外国人エンジニアを採用するという意思決定をする上で、受け入れについてなど不安はどう払拭されましたか?

末澤
そうですね、まぁなんとかなるだろうということに尽きるんですが笑、日本という異国の地に新卒で、さらに当社のように知名度も高いわけではない企業に入社しようというバイタリティは我々が想像しているより強いものだと思っています。それもあって、受け入れが失敗したらどうしようとかは考えなかったですね。

斎藤
受け入れに関しては覚悟を決めるというのに尽きる気はしています。私が前職でSun*のクライアントとしてxseeds Hubを利用した際にも、うまく行かなければ自分が責任を負うという気持ちで採用し、サービスでも重要な機能の開発プロジェクトへアサインしました。優秀な人材であることは分かっていましたし、きっとなんとかなるだろうと。結果的には期待以上で、新卒で入社して1年目でMVPを獲得するなどめざましい活躍ぶりを見せてくれました。

中出
採用した人が活躍できなかったとしたらそれはその人たちの問題ではなく私たちの問題だと思ってやっているのはあるかもしれないですね。初めて外国人エンジニアを組織に入れた時は、社内にいくつかの開発チームがあったからこそできたことではあるのですが、人の足りないチームに入れるというよりは信頼できる懐の深いリーダーがいるチームに配属することを意識していました。そのチームで外国人エンジニアが活躍している姿を見ることで、他のチームにも「自分たちもチャレンジしてみるか」と広まっていった感じはあります。

吉田
外国人エンジニアを採用すると決めたのは自分たちなので、その選択を正解にする責任は自分たちにあるのかなと思います。採用する際は、孤立してしまわないよう同時に2人以上採用するように気をつけています。別のチームへの配属にはなるのですが、両名とも沖縄拠点の近郊に住んでいるので、フォローし合えるようにと。選考会に参加する前に、日本人上司とペアにするとコミュニケーションがうまくいかなかった場合放置されてしまうケースがあると聞いていたので、チームに配属するときも、信頼できるリーダーの配下に配属することは意識しています。

内定期間にも学習を続けてもらうために

斎藤
xseeds Hubで採用した学生は入社までに1-2年の内定期間がありますが、内定フォロー施策などはどのようなことをされていますか?

吉田
当社はSun*のラボ型開発をお願いしているので、内定期間中にインターンとして参加してもらい入社前から自社のサービスに触れてもらうか、学生本人が希望する現地の企業でインターンするかのどちらかが多いです。あとはインターンをしてない期間は、月1で面談の機会を設けて日本語でテーマに沿ったプレゼンをしてもらったり、僕がベトナムに行くときは、時間が合えば一緒にご飯を食べたりというコミュニケーションを取ることはしています。

末澤
月1の面談は当社も実施しています。毎回テーマを決めて日本語で発表してもらい、日本語の練習の場にしてもらっています。また中途採用で外国人エンジニアを採用した際は、私が日頃から会話する機会の多い人にメンターになってもらって、何かあればすぐレポートしてもらえる体制にしたり、私自身も本人と積極的にコミュニケーションをとって、発言しやすい環境を作ることは意識しました。

斎藤
Sun*も1企業としてxseeds Hub選考会に参加し毎年新卒を採用しているのですが、卒業するまでどれだけ気を抜かずに勉強してもらえるかというのも重要だと思っていまして、内定が出てから卒業までどのように勉強するかの学習計画を立ててもらって、それを見ながら月一では必ずフィードバックするというような体制でやっています。

イベントレポート0510

開発組織のこれから:海外拠点の立ち上げについて

外国人エンジニアを採用したその先の話として、現地での開発拠点立ち上げについても話題に上がりました。

斎藤
マネーフォワードさんは現在ベトナムに2つ開発拠点を持っていらっしゃいますが、海外拠点を立ち上げるに至った経緯を教えていただけますか?

中出
xseeds Hubで採用を始めたのとほぼ同じ時期にSun*のラボ型開発も始めて、その経験から、拠点が海外であっても日本で作るのと同じものを作ることができるという感覚を得ました。そうするとそのうちだんだん自分たちでやりたくなってきてしまって(笑)

吉田
当社も海外拠点の立ち上げに取り組もうとしているのですが、実際のところラボ型開発とどのような違いがありますか?

中出
やはり自分たちで全てやらなければならないことの負荷はあります。Sun*さんのラボ型開発を利用していると、色々フォロー体制があるので楽なんですよね。ヒューマンマネジメントもやってもらえたり、退職者が出た際のバックアップなども対応してもらえたり。ただ、当社の指針としてサービスをできるだけ自分ごと化してもらいたいという思いがあったので自社で拠点を立ち上げるに至りました。今までフォローしてもらっていたことを自分たちで全てやらなければならないという側面はありつつも、一体感を作りやすいというメリットはやはり感じています。

吉田
以前、採用した方が自国に戻ることを理由に退職をしてしまったことがありまして、それが悔しくて当社も現地に拠点を立ち上げることを計画しているのですが、如何せんSun*のラボ型開発のメンバーはプロジェクトマネジメント含めてとても上手なんですよね。これを自分たちでできるのだろうかと思うと不安でなかなか踏み切れない部分があります。

Sun*のダナン拠点で3年ほどラボを持っていたのですが、先日そのチームを縮小せねばならなくなりました。その際、Sun*のメンバーから「3年間ありがとうございました」というメッセージムービーをもらったんです。それはもう社内のメンバーと一緒に観ながら号泣しましたね(笑)それもあって、Sun*さんのチームの良さは実感しているところです。

斎藤
ありがとうございます。国内人材と外国人エンジニアではマネジメントに違いがあるところではあると思うのですが、ぜひチャレンジしていただきたいと思っています。

後編ではAIがもたらす開発組織への変化について語っていただきました。

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