採用コストとは

採用コストとは企業が社員(正社員・契約社員)やアルバイトなどの採用にかけた費用のことを指します。採用コストは外部コスト内部コストに分けられます。

外部コスト

外部コストとは、採用を行うことを目的として外部サービスを利用した際にかかる費用を指します。どのタイミングで費用が発生するかはサービスによって変わります。

例えば求人広告を利用する際には求人を掲載するタイミングで費用が発生しますし、採用管理システムは月額や年額で一定の金額を支払うことが一般的です。人材紹介や一部のダイレクトリクルーティングサービスでは内定承諾時点で成功報酬を支払うものが多いです。ダイレクトリクルーティングサービスの中には、スカウト通数に応じて料金が変動するものもあります。また採用サイトやパンフレットを外注した場合のコストも外部コストに分類されます。

内部コスト

一方で内部コストは、採用関連業務でかかった経費のことを指します。例えば採用担当者の人件費や面接業務に携わった現場従業員の人件費、対面での面接を行うために使われた交通費、リファラル採用で求職者を紹介した従業員へのインセンティブなどがこれにあたります。中にはリファラル採用のために会食を実施した場合の費用を負担する企業もあります。

採用単価の計算方法

採用単価とは、採用した社員やアルバイト一人当たりにかかった金額を指します。計算方法は以下のようになります。

採用コスト(外部コスト+内部コスト)÷採用人数=採用単価

採用単価が低ければ低いほどコストパフォーマンスがよいと考えられます。また採用難易度の高い職種や業種であるほど、採用単価が高くなる傾向があります。

エンジニア採用にかかるコスト

続いてエンジニア採用にかかるコストを、業種別や採用手法別にご紹介します。

採用にかけるコストは全体的に増加傾向

新型コロナウイルス感染症拡大による景気悪化の影響で採用も縮小傾向にあった2021年までと比べると、採用予算は全体的に増加傾向が見られます。

株式会社マイナビ「中途採用状況調査2023年版」(2022年実績)(※)によると、2021年の採用予算が544.5万円だったのに対し、2022年は618.4万円と73.9万円増加しています。実際に採用にかかった費用の実績も前年度より89.6万円増加しており、採用に力を入れている企業が増えたことが分かります。必然的に採用の競争率も上昇していることが推察できます。

特に、エンジニアを多く採用するIT・通信インターネット業種の企業が2022年に採用にかけたコストの平均は610.1万円で、「メーカー」「金融・保険・コンサルティング」に次いで3番目となっています。

エンジニア採用 コスト

またIT・通信インターネット業種においては採用コストが前年比30%以上増加したと回答した企業が40%以上と最も多くなっており、エンジニア採用にかけるコストが増加していることが分かります。

(※)調査内容のうち回答数が30未満のものは記事内で取り扱っておりません。

採用手法別コスト

採用コストは、どのような採用手法を利用するかによっても大きく変動します。それぞれの採用手法別に企業がどの程度コストをかけているかも、前述の調査で明らかになっています。

企業が採用手法の中で最もコストをかけているのは「人材紹介」で340.7万円、次いで「ダイレクトリクルーティング」が150.2万円となっており、僅差で「求人広告」(117.9万円)、「合同企業説明会」(115.9万円)、「求人検索エンジン」(113.1万円)と続きます。

エンジニア採用は転職潜在層へのアプローチが主流に

前述の調査によると、エンジニア採用を多く採用するIT・通信インターネット業種においては、他業種と比べて「リファラル採用」「ヘッドハンティング」を活用する企業が多くなっていることが分かります。

また採用コストのうち「採用ブランディング」にかけたコストも「金融・保険・コンサルティング」に次いで2番目となっており、中長期的な目線で採用に投資する意図が読み取れます。

これらのことから、エンジニア採用においては転職市場に出てくる前の顕在層の求職者に対するアプローチを重要視する傾向があることが分かります。

エンジニアの採用のコストを抑えるポイント

国内企業が採用にかけるコストが全体的に増加していることに加えて、特にエンジニア採用にかけるコストは他職種と比べても高くなる傾向がある中で、採用コストを抑えるポイントをご紹介します。

ポイント1:現状の採用コストを分析する

まずは現状の採用コストの内容を分析し、採用コストが高くなっている原因を見つけ出します。職種に対し採用単価は妥当かどうかを検討し、成果につながっていない施策をあぶり出し、成果につながらない要因を探ります。

エンジニア採用 コスト

前述の調査によると、職種ごとにかけた1人あたりの求人広告費のデータのうち「ITエンジニア」は前年比約1.4倍の55.9万円となっています。あくまで平均値であるため参考ではありますが、これよりも多くのコストがかかっている場合は、エンジニアの採用コストを見直してみても良いかもしれません。

ポイント2:採用基準を見直す

競争率の高い国内のエンジニア採用市場の中でも、経験が豊富だったり専門性の高い人材は採用難易度が高くなっています。採用難易度が高い人材を採用するためにはより高いコストをかける必要があるため、採用基準を見直してみるのも採用コストを抑える上でのポイントです。

スキルや志向性など人材要件の解像度をあげ、どのような企業と競合になりそうか、ターゲットの転職軸は何かなどの採用戦略をしっかりと練ることで採用コストを最適化していくことができます。

また場合によっては未経験や経験の浅い人材を採用し、育成に力を入れることで採用コストを抑えるのもひとつの選択肢です。

ポイント3:適切な採用手法を選定する

採用コストは、どのような採用手法を選択するかによって大きく変動します。そのため適切な採用手法を選定することが、採用コストを抑える重要なポイントです。

最もコストを抑えられる採用手法はリファラル採用です。経験豊富で実績のあるエンジニアは人と人とのつながりで転職先を選ぶケースも多いため、転職市場に出てきていない人材にアプローチできる点も大きなメリットとなります。

また、外国人エンジニアの採用も効果的です。国内よりも母集団の規模が大きくなるため採用難易度が低く、短期間での採用が実現できるため、結果的にコストパフォーマンスを抑えることにつながります。

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ポイント4:エンジニア採用の目的を見直す

原点に立ち返り、なぜエンジニアが必要なのか、本当にコストをかけてエンジニアを採用する必要があるのかを考えてみることも大切です。

短期的にエンジニアが必要という場合は、フリーランスのエンジニアに業務を委託することもできますし、新規事業をスピード感を持って立ち上げたい場合などは、採用という時間のかかる選択肢ではなく、外部の開発支援サービスを利用することにより目的を達成することができます。

まとめ

新型コロナウイルス感染症拡大による景気悪化の影響によって、採用コストや採用そのものを縮小する傾向が続いていましたが、景気回復の予兆とともに再び採用に力を入れる企業が増えています。中でもエンジニア採用は需要の高止まりが続いており、ますます採用コストをかける必要がある領域になっています。人事の重要なミッションのひとつである採用コストの最適化を実現する上で、本記事を少しでもお役立ていただければと思います。