目次
エンジニア採用が難しい3つの理由
エンジニア採用が難しい背景には以下のような要因が考えられます。
・エンジニアの有効求人倍率が高い
・企業と求職者の間で希望する条件や待遇にズレが生じている
・フリーランスや副業などキャリア形成の手段が多様化している
エンジニアの有効求人倍率が高い
働き方改革やDX推進の流れを受けて、これまでエンジニアの採用経験がなかった企業もエンジニア採用市場に参入してきています。またIT技術を活用した新規事業へ取り組む企業などは、ベンダー企業に頼っていた開発体制を内製化する動きなども活発化しています。
しかし需要(エンジニアを採用したい企業)の高まりに対し供給(エンジニア求職者)が足りていないのが現状です。これは有効求人倍率にあらわれています。
ハローワークが集計しているデータを見ると、ITエンジニアを含む情報処理・通信技術者の有効求人倍率は2.98となっています。これは1人のエンジニア求職者に対し3つの求人があることを意味しており、エンジニア採用がかなりの売り手市場である事が分かります。
企業と求職者の間で希望する条件や待遇にズレが生じている
エンジニアの需要が高くなるにつれて、エンジニアの給与水準は上昇傾向にあります。これを理解せずにオファー金額を据え置きにしていると、企業とエンジニア求職者の間で条件や待遇に対する認識のズレが生じることがあります。このズレもエンジニア採用に苦戦する理由のひとつといえます。
エンジニア求職者が複数の内定を保持している場合、オファー金額の高い企業へ内定を承諾するでしょう。内定辞退が採用課題となっている企業は、一度現行の給与テーブルを見直してみるのもいいかもしれません。
フリーランスや副業などキャリア形成の手段が多様化している
終身雇用や年功序列の制度が崩れたことにより転職が当たり前になって久しいですが、昨今はさらにキャリアの在り方に変化が生じています。例えば、一定のスキルを身につけたエンジニアがフリーランスへ転向することも一般的になりつつありますし、また副業を許可する企業も増えてきています。
このように正社員にこだわらないキャリアアップの手段が増えていることで、転職市場におけるエンジニアの流動性が低くなっていると考えられます。企業側も時代の変化に合わせて副業に関する制度を整備するなど、従業員のキャリア選択をせばめない姿勢を持つことも、求職者に対する魅力づけのひとつになります。
エンジニア採用に苦戦する企業の共通点
次に、エンジニア採用に苦戦する企業の共通点からつまずきがちなポイントをみていきます。
①求めるエンジニアレベルと採用できるエンジニアレベルがズレている
企業が求めるエンジニアのレベルと採用できるエンジニアのレベルがズレていると、そもそも母集団が集まらないなどの課題にぶつかります。
技術力の高いエンジニアはどの企業も喉から手が出るほど欲しい人材です。レッドオーシャンにやみくもに挑むよりは、自社が本当に必要としているスキルや能力を洗い出し、場合によっては育成も視野に入れて人材要件を作ることが重要です。
②書類選考の基準が厳し過ぎる
応募は来るが書類選考の通過率が悪いという企業は、書類選考の基準や方法を見直す必要があります。よくあるケースでは、書類選考を非エンジニア人事が担当し、現場エンジニアからヒアリングした特定の言語の経験年数のみを書類選考の基準としているケースなどがあります。
特定の言語経験年数に縛られるあまり、他に光る経歴や経験があったとしても一律で不採用となってしまい、機会損失を招いているかもしれません。書類選考は現場エンジニアが行うのが理想ですが、非エンジニア人事の場合は足切りラインを設定し極力面接や面談でスキルを判断するという戦略がよいでしょう。
③エンジニアが魅力に感じる情報発信ができていない
エンジニア採用において競合と差をつけるひとつの方法が情報発信です。勉強会や資格取得補助、書籍購入補助などエンジニアが魅力に感じるような制度はきちんと伝えることが大切です。技術力の高いエンジニアや業界で知名度のあるエンジニアがいる場合は、社員インタビューなどで自社の魅力を語ってもらうことも効果的です。
逆にこのような情報発信ができていないと、エンジニアにとって働きがいのある環境かどうかが不透明だと受け取られかねません。
④現場のエンジニアを採用に巻き込めていない
エンジニア採用は専門性の高い領域であるため、現場のエンジニアを採用活動に巻き込むのは必須です。逆にいえば現場のエンジニアを採用に巻き込むことができていないと、人材要件のズレやそれに伴う選考通過率の低下などのリスクが考えられます。
エンジニア採用を現場のエンジニアにも自分ごととして捉えてもらうように働きかけることが大切です。
⑤制度の見直しができていない
エンジニア採用における動向は日々変化しています。その変化に対応せず旧態依然としたままの組織体制では、優秀なエンジニアに魅力を感じてもらうのは難しいでしょう。
前述のようなオファー金額や年収の見直しもそうですが、もしそれらを引き上げることが難しいようであれば、エンジニアが魅力に感じるような制度を作ることも検討する必要があります。
エンジニア採用を成功させるポイント
エンジニア採用に苦戦する企業の共通点をみてきましたが、そこからエンジニア採用を成功させるポイントについて考えてみます。
①エンジニア採用の目的を考える
エンジニア採用において最も大切なのは「なぜエンジニアを採用するのか」を考えることです。ここが曖昧だとエンジニア採用することそのものが目的になってしまいかねません。
エンジニア採用の目的をステークホルダー間で共有できていれば、求める人材を言語化し人材要件に落とし込むところから、それに基づいたターゲット選定や採用チャネル・手法などを戦略的に組み立てることができます。このような採用計画の策定はエンジニア採用における第一歩ともいえますので、しっかりと行いましょう。
②魅力的な求人票を作成する
エンジニア採用の目的に基づいて人材要件が明確になったら、次は求人票を作成します。求人票にはできるだけ具体的な業務内容を記載することで、入社後の活躍イメージを想起させることができます。
他にもエンジニアフレンドリーな福利厚生や、キャリアパスなどが記載されているとより魅力づけに効果を期待できます。
③採用基準を明確にする
次に採用基準を明確にすることも大切なポイントです。特に面接などでは能力や回答内容よりも相手の印象に左右されがちなので注意が必要です。事前に評価項目を設定し、それに対応する質問を用意して点数をつけていくのがおすすめです。
技術力に関しては専門性が高く非エンジニアでは判断しかねることも多いため、面接にはエンジニアにも同席してもらうことが重要です。その際には事前に採用基準や面接での注意点を伝えておくとよいでしょう。
④給与テーブルや待遇を見直す
せっかく優秀なエンジニアに出会っても、内定を承諾してもらえないと意味がありません。内定辞退の理由で多いのが「希望年収とのズレ」です。エンジニアのスキルに見合ったオファー金額を提示できるよう、給与テーブルや待遇を見直してみることもエンジニア採用成功のポイントです。
同時に既存のエンジニアの評価基準も見直すことで、優秀なエンジニアを自社に引き止める材料にもなるでしょう。もしオファー金額や年収を引き上げることが難しい場合は、副業を認めるなどもひとつの手段です。
⑤多様な働き方を取り入れる
働き方改革や新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、多くの企業がリモートワークやフレックスタイム制など多様な働き方を導入しています。特にリモートワークを希望するエンジニアは多く、原則出社の就業形態を変えられない企業などは求職者からすると古い体質が残っているのではと警戒されるかもしれません。
多様な就業形態ができる企業は、エンジニアに対し魅力になるだけではありません。例えば育児や介護など働き方に制約がある人材が能力を発揮する機会が増えるという企業に対するメリットもあります。自社にとってのメリットやデメリットを比較して導入を検討してみてはいかがでしょうか。
⑥現場のエンジニアを採用に巻き込む
エンジニア採用において現場のエンジニアを巻き込むことは必須だとお伝えしましたが、何もかも現場に丸投げしてしまうと、現場の負担が増加し人事と現場の溝が深まる結果になりかねません。そこで大切なのが役割分担を明確にすることです。
具体的には人材要件の洗い出し・スカウトターゲットの目線合わせ・書類選考など技術スキルの見極め・求職者の意向上げなどが、エンジニアの力を借りられるとよい場面です。それ以外に採用計画全体の設計や面談・面接調整、スカウト送付などは人事が行うとよい領域です。
⑦新しい採用チャネルや採用手法を検討する
これまでご紹介した成功のポイントを見直してもうまくいかない場合は、新しい採用チャネルや採用手法を検討してみることをおすすめします。例えば以下のようなものがあげられます。
・採用代行(RPO)の活用
・外国籍エンジニアの採用
・開発支援サービスや業務委託などの外部リソースの活用
採用代行(RPO)の活用
採用代行(RPO)とは、人事が行っている採用活動を委託するサービスのことです。あくまで外部サービスなので採用計画や舵取りは人事側が行うのが理想ですが、人手が足りない場合やエンジニア採用に初めて取り組む場合などは心強い味方になるでしょう。
特にエンジニア採用に関して実績や知見が豊富な採用代行サービスに頼むことがポイントです。エンジニア採用の体制をスピード感を持って立ち上げたいという企業におすすめです。
外国籍エンジニアの採用
国内のエンジニア採用市場の競争率の高さはお伝えした通りですが、少し視野を広げて海外採用市場へ目を向けると一気に母集団が広がります。現地の給与水準よりも日本の給与水準の方が高い国や地域であれば、優秀なエンジニアを採用コストを抑えて採用できる可能性が高まります。
コスト面だけではなく、ベトナムやインドネシアなど政府や行政が高度IT人材の輩出に力を入れている国や地域であれば、国内では出会えないような優秀なエンジニアと出会える可能性も大いにあります。
開発支援サービスや業務委託などの外部リソースの活用
最後に紹介するのは採用の文脈から少し外れてしまいますが、エンジニア採用の目的が新規事業の開発なのであれば、開発支援サービスや業務委託などの外部リソースを活用することもひとつの手段です。
特にスピード感を持ってPoC(概念実証)を繰り返したい場合などは、開発支援サービスや業務委託を活用しながら、並行して採用活動を行う企業もいます。信頼の置ける開発支援サービスや業務委託の方に出会うことができれば、スピード感を落とすことなく新規事業開発が行えるため、検討してみてはいかがでしょうか?
まとめ
国内のエンジニア採用の市場感は引き続き厳しい状態が続きます。採用を成功させるために現状の施策や制度、採用体制を見直すことに加えて、少し発想を変えて新しい採用チャネルや手法を試してみるのはいかがでしょうか?