目次
エンジニア採用における人事の基礎知識
まずはエンジニア採用の基礎的な知識をご紹介します。
エンジニア採用市場の動向
エンジニア採用においてまず人事が知っておくべきは、エンジニア採用市場の動向です。エンジニア採用市場の現況を把握し、国内でエンジニア採用を行う難度の高さを認識することが、適切な採用戦略を立てることにつながります。
国内のエンジニア採用が難しいと言われている最大の理由は、エンジニアに対する需要と供給のバランスが崩れていることが挙げられます。
経済産業省のレポートによると、2030年までにIT人材は最大79万人不足すると予測されています。またdodaの調査によると、2023年3月のIT・通信の求人倍率は10.33。1人のエンジニアを10社が奪い合う構図となっていることが分かります。
これらのことからも国内のエンジニア採用は他職種に比べて難度の高い領域であることがわかります。そのためエンジニア採用は全社一丸となって取り組む必要があります。経営層や現場エンジニアにも人事と同じ目線で採用に取り組んでもらうために、上記のようなエンジニア採用市場の競争率の高さを認識してもらい危機感を持ってもらうことは効果があるでしょう。
▼国内のエンジニア採用市場の動向についてはこちらの記事でも詳しくご紹介しています。
技術に関する知識
非エンジニアの人事であっても、ある程度技術に関する知識を身につけておくことで、現場の人材ニーズを正しくキャッチして人材要件に落とし込んだり、解像度が高く求職者にとって魅力的な求人票を作成するのに役立ちます。
また、新しい言語の出現や先端技術の進化が目覚ましい領域でもあるため、常に情報に触れてトレンドをキャッチアップする意識を持つことも重要です。
エンジニア採用に必要な人事のスキル
次に、エンジニア採用において人事が身につけておくと役に立つスキルをご紹介します。
自社に必要な人材の把握
エンジニア採用に限らず、自社がどのような人材を必要としているかを把握することは人事にとって必須のスキルと言えます。
経営層から下りてくるニーズに基づいて採用戦略を練ることが前提ですが、一方で現場と直接ヒアリングする機会を定期的に設けることで、経営層の方針と現場の肌感覚との間にズレがないかを確認することも大切です。
特に現場エンジニアとヒアリングをする際には、前項で紹介した技術に関する知識を身につけておくことで、現場がどのようなエンジニアを必要としているのかの理解を深めることができます。より具体的な採用ターゲットを描くことで、ペルソナの設定や人材要件の策定に役立ちますし、ターゲットに対しどのような訴求を行うかも解像度を上げることができます。
またエンジニア採用市場の市況感を把握しておけば、求める人材がマーケットとして採用可能なレベル感かどうかを会話することができます。現場のニーズと市場感がマッチしない場合は、採用要件をMUST(絶対に身につけておいてほしいスキルや経験)とWANT(できれば身につけておいてほしいスキルや経験)に分類し、現実的に採用できるターゲットをすり合わせる必要があります。
採用マーケットのトレンド把握
自社の人材ニーズを満たす採用戦略を立てる上で大切なのが、採用マーケットのトレンドを把握することです。採用市場は3-5年ペースでトレンドが移り変わっていきます。トレンドがアップデートされていないまま採用戦略を立てても、求職者にとって魅力的な施策を打つことができずなかなか採用につながらないケースがあります。
そのため、前項で紹介したような採用市場の現況や変化を把握し、エンジニアが転職やキャリア形成に何を求めているのか、どのように魅力を訴求するかの戦略を立てることも、人事の重要な役割です。
適切な採用手法の選定
採用戦略を立てる上でもうひとつ重要なのが、適切な採用手法を選定することです。エンジニアを採用する手法はたくさんありますが、採用したいターゲット層・採用にかけられる予算・採用に割ける工数の3つの観点から比較して、自社に合う採用手法を見つけることが大切です。
採用媒体
採用媒体は広く求職者の目に留まる点がメリットです。特にエンジニア採用に特化した採用媒体などであれば、効率的な母集団形成につながります。一方で採用媒体に登録している全ての企業と横並びで競うため、企業の知名度がカギになります。
人材紹介
人材紹介は、母数は多くありませんが自社に合う人材と出会える確率が高い点がメリットです。成功報酬は採用媒体よりも高くなる場合が多いですが、エージェントとのコミュニケーション次第では確実にエンジニアの採用に寄与してくれる採用手法です。
ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングは、スカウトメールなど企業が求職者に直接アプローチができる手法です。そのため企業が求める求職者との接点を持ちやすく、成果報酬も比較的抑えられていることが多いです。ただし企業が直接手を動かす必要があるため工数がかかる点がデメリットです。
また、スカウトメールを打つ対象の目線合わせを現場エンジニアと行ったり、高いレベル感の人材をスカウトする際には現場エンジニアが直接スカウトを送るなど現場を巻き込むことが効果を高めるポイントです。
リファラル
リファラルは最も採用単価を抑えることができる採用手法です。また経験豊富な人材は人と人とのつながりを活用して転職を行うケースが多く、CTOなど事業の根幹を担う人材を採用したい場合は積極的にリファラルを活用する必要があるでしょう。
採用代行
採用代行は、企業の採用戦略に沿って人事と同様の業務を行うサービスです。サービスによっては採用戦略の策定から参画してもらうことも可能で、企業に採用領域を担う専任がいない場合や、初めてエンジニア採用を行う場合に特に有用です。
外国人エンジニアの採用
国内のエンジニア採用市場の厳しさから、海外に目を向ける企業が増えています。採用単価を抑えながら優秀なエンジニアを採用できる点が外国人エンジニアを採用する大きなメリットです。
注意すべきは、外国人エンジニアを採用する場合は、ビザの申請や居住環境の整備などの手続きが発生します。初めて外国人エンジニアを採用する場合などは、その辺りのサポートが充実したサービスを選ぶと安心です。
xseeds Hubは海外トップ大学と提携し、優秀なエンジニアの育成から採用、内定フォローまでのサポートを一貫して行う採用プラットフォームです。
採用以外の選択肢も視野に入れる
少しイレギュラーですが、採用以外の手法を活用するのも、エンジニアリソースを確保する上では効果的な選択肢です。例えばフリーランスエンジニアへの業務委託や開発支援サービスなどが挙げられます。
特に開発支援サービスはスピード感を持ってプロダクトを開発したり、新規事業の立ち上げを推進する上で役に立ちます。
現場エンジニアを巻き込む力
人事がエンジニア採用に取り組む上で最も大切と言っても過言ではないスキルは、現場エンジニアを巻き込む力です。
エンジニアは他職種に比べて「技術がわかる人と話がしたい」という要望が強い傾向にあります。そのためカジュアル面談には現場エンジニアに積極的に参加してもらうことで意向上げにつながります。
また書類選考や面接などの評価の場面においても、非エンジニアが評価を行うと現場エンジニアの認識とのズレが生じるリスクがあります。そのため選考にも極力エンジニアが参加してもらうことが理想です。
一方で人事は本記事でも記述しているようなマーケットの把握や戦略立案、採用手法の選定など人事ならではの知識やスキルを活かし、現場エンジニアとの協力関係を築きながらエンジニア採用へ取り組むことが重要です。
エンジニア採用のステップ
ここまで、エンジニア採用で人事が身につけておくべき知識やスキルについて紹介してきました。この項ではエンジニア採用の具体的なステップについて解説します。
STEP1:採用要件のヒアリング
エンジニアに限らず、採用は自社がどのような人材を必要としているのかを把握することからスタートします。基本的には経営層の採用方針に従う形になりますが、経営層と現場との間で人材ニーズの乖離が生じないように、人事は橋渡しとして各部署にしっかりとヒアリングを行いましょう。その際に職種を募集する背景なども合わせてヒアリングを行うことで、求人票を作成する際にも役立ちます。
STEP2:ペルソナ設計
どのような人材を必要としているかがヒアリングできたら、ペルソナを設計します。ペルソナを設計する際には、開発経験や習得スキルだけではなく、転職回数や在籍企業、さらには家族構成に休日の過ごし方など、人となりが想像できるまで一方踏み込んだ具体的な要素を洗い出していくことがポイントです。
ペルソナを設計することで、ターゲットがどのタイミングで転職に対するモチベーションが上がるのか、企業のどのような点に魅力を感じるかなどの仮説を立てることができます。その仮説に基づいて、競合企業のリサーチや、ターゲットに対しどのようにタッチポイントを設計するのか、自社の魅力を整理しどのように打ち出していくのかなどの戦略を立てます。
ペルソナにはリアリティが大切になるので、設計の際には現場エンジニアに参加してもらうと良いでしょう。
STEP3:採用手法の選定
ペルソナが作られターゲットの行動予測が立てられたら、採用手法を選定します。前項でも紹介したようにエンジニア採用の手法は数多くありますが、ターゲット層とどのように接点を持つか、自社の魅力をどのように伝えるかなどを考えながら適切な採用手法を選定しましょう。
また「なぜ採用したいのか」という本質に立ち返ることも大切です。採用の目的が達成できるのであれば、外国人エンジニアの採用や開発支援サービスの活用など、視野を広げてみることも重要です。
STEP4:求人票作成
採用手法が確定したら、求人票を作成します。求人票は求職者が必ず目を通すものなので、求職者が魅力に感じるような内容を盛り込むことを意識しましょう。具体的には、募集の背景や具体的な仕事内容、求めるスキル、サービス・事業の説明、開発環境、選考プロセスなどが挙げられます。
例えばポジションの募集背景を記載することで、自社の事業フェーズや、その募集に対する期待値を伝えることができます。さらに仕事内容をできるだけ具体的に記載することで、求職者に働くイメージや活躍するイメージを想起してもらいやすくなります。求めるスキルの項目は、必須スキルと歓迎スキルに分類して記載することでエントリーにつなげやすくなります。
また求人票では、求職者に求めることだけではなく、自社の魅力を正しく伝えるという観点で作成することも大切です。例えばサービス・事業説明では具体的な数字を用いて成長性を示したり、開発環境を詳細に記載することで技術に明るい人材がいることを印象付けたりすることができます。他にもエンジニアフレンドリーな福利厚生や制度などがある場合は忘れず記載しましょう。また選考プロセスを求人票に記載することで、透明性を高め求職者に安心感を与えることができます。
STEP5:選考プロセス設計
忘れてはいけないのが選考プロセスの設計です。面接回数をどの程度に設定するのかや技術テストを行うのかどうかなど、適切な評価を行いつつ選考のリードタイムをできるだけ短くできるような工夫が必要です。
また評価のミスマッチを防ぐため、選考プロセスにはできるだけ現場エンジニアに関わってもらうと良いでしょう。とはいえ現場エンジニアの工数を圧迫することの無いよう、誰に選考官を担ってもらうのかもセットで設計することが大切です。
STEP6:選考
ここまでできたらいよいよ選考です。選考では、選考官のフィーリングで判断してしまうことのないよう、評価基準を明確にしマニュアルに落とし込んだり、場合によっては選考官のトレーニングを行うと良いでしょう。トレーニングの際には、選考は評価と同時に魅力づけの機会であることも伝え、選考官には意向上げの意識を持ってもらうことも重要です。
また候補者には誠実に対応することを心がけることが大切です。例えば不採用になった候補者に対し、希望があれば不採用の理由をフィードバックすることで、企業の公正さなどのブランディングにつながる場合もあります。
▼エンジニアの面接での評価に関してはこちらの記事でも詳しく解説しています。
STEP7:内定者フォロー
選考プロセスを経て無事に内定が出たら、内定者フォローを行います。複数の内定企業を比較している内定者に対しては、まず転職軸をしっかりとヒアリングしましょう。
面談の機会を設けて意向上げを図ったり、場合によってはオファー金額を引き上げたりストックオプションを付与することで内定承諾率の向上につながります。
STEP8:オンボーディング・トレーニング
無事に内定承諾に至ったら、入社後の迅速な活躍を見据えてオンボーディングに取り掛かります。場合によってはトレーニング期間を設けても良いでしょう。
この際にも現場エンジニアの協力を得ながら進めるのがおすすめです。
まとめ
エンジニア採用に取り組むにあたって、人事が身につけておくべき基礎知識やスキル、そしてエンジニア採用の具体的なステップを解説してきました。国内のエンジニア採用市場の厳しさは緩和の兆しが見えませんが、ぜひこの記事を参考にしてエンジニア採用に取り組んでいただければと思います。