目次
今後のシステムを担う人材育成に期待を寄せて海外人材採用を決意
– 国内の新卒エンジニア採用の課題についてお聞かせください。
伊藤
当社は家賃債務保証サービスを提供する事業会社で、IT技術との結びつきがそこまで強くないというイメージを持たれることが多く、国内学生への訴求に課題を抱えていました。
毎年試行錯誤を重ねて取り組んではいますが、特に技術的な基盤を持った学生の採用はハードルが高いと感じています。
そのタイミングでxseedsの存在を知ったことで海外人材採用という選択肢を検討するようになり、人事部とも相談の上で選考会へ参加することを決めました。
石本
これまでは日本での居住経験がない方をエンジニア職で採用したことはありませんでした。
しかし、海外人材を採用することで、D&I(ダイバーシティアンドインクルージョン)を念頭に置いた人材ポートフォリオを確立し、これまでにない新たな発想を取り入れるという期待もありました。
伊藤
大きなチャレンジではありましたが、今後の当社のシステムを担う優秀な人材を育てるためであれば、海外からの採用もやってみようと意思を固めました。
– ハードルや不安はありましたか?
石本
国内採用とは異なる入社手続きや、日本文化に馴染みパフォーマンスを発揮してもらうための受け入れ体制を整える必要がある点などは不安の声として上がっていました。
手続きに関してはxseedsや行政書士のサポートを受けながら対応しつつ、居住環境や銀行口座など日本での生活に困らないような環境の整備を進めました。
また日本の文化や慣習をまとめた資料を作成するなど、来日後にネガティブなギャップを受けないような工夫も行いました。
伊藤
ベトナム学生の採用は初めてで、求める人材にリーチできるのか、本当に優秀な人材が採用できるのかは不安に思っていた点でした。
その辺りは事前の説明を通じて、xseedsがベトナムトップレベルの大学と提携して4年間にわたりITと日本語の教育を提供して優秀な人材を輩出していることを理解できたことである程度解消されました。
また、選考会参加前に選考会運営の流れや内定〜入社までのステップなどを丁寧に説明してもらえたことでイメージが沸いたことも安心できたポイントのひとつです。
エンジニアとしてのマインドや資質を重視した評価
– 実際に選考会に参加されて、学生に対してどのような印象を抱きましたか?
伊藤
大学在学中から技術を身につけるための実践的なプロジェクトなども多数経験されている方が多く、そういう意味での手を動かせる技術力の高さは感じました。
また日本就職を希望している学生さんだからこそ、人によって差はありますが日本語もしっかりと勉強されてきたのだろうという印象を受けました。
石本
確かに、人による日本語力の差は予想よりもあったかもしれないですね。1月に1期生として入社したDさんは、かなり日本語能力が高くて、会話に関してはほとんど問題ないレベルです。
– 評価基準を教えてください。
伊藤
エンジニアとしての採用になるので、何かひとつでも技術に関して秀でたを持っているかどうかは確認していました。
とはいえ新卒採用でもあるので、エンジニアとしてのマインドや資質をより重視しました。
例えば、当社は事業会社であるため、特定の技術分野に特化するというよりはフルスタックエンジニアとしてシステム全体を見る志向性があるかどうかなどです。
他にも常に一段上の課題に挑戦するマインドを持っているか、問題や課題を分析し解決することを楽しめるか、緻密な作業を要求された精度まで遂行する継続力があるか、などを面接で確認しました。
日本語に関しては、質問の意図を汲み取って回答しようとする姿勢が感じられるかどうかなどのコミュニケーション能力に重きを置きました。
石本
ただ、1期生にであるDさん関してはまずは当社に定着し活躍してもらうことが最重要事項だったため、先ほど申し上げた通り日本語能力の高さも評価ポイントのひとつでしたし、日本に知人がいらっしゃるなど日本との結びつきが強い点なども加味しました。
長期にわたる内定期間=成長の期間
– 内定期間中のフォロー施策についてお聞かせください。
伊藤
内定期間中は毎月1回面談を実施し、学習状況の確認と日本語強化のため毎月課題を決めたプレゼンを実施してもらっていました。
プレゼンのテーマは「日本とベトナムの食文化の違い」や「日本で2泊3日のスケジュールでウィンタースポーツを楽しむとしたらどこに行きますか」など、日本の文化や生活に馴染みを持ってもらうことを念頭に置いたものにしています。
– 国内採用よりも長期にわたる内定期間で、成長を感じたポイントなどはありますか?
伊藤
Dさんの場合はすでにN2(*1)を取得されていたので、日本語能力に関して心配はあまりなかったのですが、それでも毎月のプレゼンを通じて日本語が日に日に上達していることを感じることができました。
また、ITPEC試験のFE区分(*2)は一度不合格になってしまったのですが、そこから自身の弱点を分析し、勉強のやり方を変更して取り組んでいる姿が印象的でした。
(*1)日本語能力試験のレベル。「日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる」と定義される。
https://www.jlpt.jp/about/levelsummary.html
(*2) ITPECアジア共通統一試験。アジア6か国(フィリピン、タイ、ベトナム、ミャンマー、モンゴル、バングラデシュ)で実施されている試験で、このうちFE区分は日本国内の基本情報技術者試験相当の資格として扱われる。
https://itpec.org/jp/about/itpec-common-exam.html
– 入社後のスムーズな立ち上がりのためのオンボーディング施策などは実施されましたか?
伊藤
入社前の1週間日本に来てもらい、東京・沖縄それぞれのオフィスで顔合わせも兼ねたインターンシップを実施しました。
インターンシップでは、業務内容の説明に加えて、Dさん自身の技術力を測ることを目的とした課題を提示して、1週間で資料にまとめてプレゼンをしてもらいました。
海外からIT人材を活用することは持続的な成長に不可欠
– 1期生となるDさんの入社後3ヶ月ほどが経過します(取材当時2024年4月)が、どのような業務をされていますか?
伊藤
技術的な学習と並行して、部署内で利用するアプリケーション開発に取り組んでいただいています。
メンバーから要件を聞き取り、画面サンプルを作成しながら進めることで、システム開発全体を実際に経験していただいています。
石本
4月には同期となる国内の新入社員とともに入社式にも出席してもらい、彼らとともに新卒研修に参加してもらっています。
Dさんの方が早く業務に参加してもらってはいますが、同期としてのつながりを築いてほしいことが主な狙いです。
また新卒研修では一通りの業務体験も行ってもうため、エンジニアとして携わるシステムが現場でどのように活用されているのかを目の当たりにしてもらうのにも良い機会だと考えています。
– 将来どのような活躍を期待しますか?
伊藤
現在は部署内のシステムを担当してもらっていますが、開発の幅を徐々に広げて主力メンバーへと成長していただきたいです。
また、オフショア開発のパートナー企業とのブリッジとしての役割も期待しています。
石本
Dさんに関しては海外人材であり、かつ女性でもあるので、人事としてもD&Iの観点で組織に良い刺激を与えていただけるのではと期待しています。
– 今後も海外人材の採用は継続されますか?
石本
もちろん職種によって適正があると思いますので、そこは見極めながらですが、ことIT人材に関しては継続していきたいと考えています。
入国審査が遅れたりなどで1年空いてしまってはいるのですが、Dさんの入社で受け入れや活躍の目処は立ったと感じているので、引き続き取り組んでいければと思います。
伊藤
現場としても、優秀な人材が採用できるチャネルとして期待しています。
– 最後に、海外人材の採用にハードルを感じている日本企業の方々に向けたメッセージをいただけますか?
石本
人材不足が深刻なIT業界において、海外からIT人材を活用することは持続的な成長に不可欠です。また企業価値向上のためにも今やD&Iの確立は経営上不可欠な要素であり、海外人材を含む多様な人材の採用は大きな施策のひとつとなると思います。
一方、自社のみで海外の優秀な人材に直接リーチするのは難しいこともあるので、xseeds Hubのようなプラットフォームを活用することが解決策のひとつになりうると思います。