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学生時代の豊富な開発経験を持つ人材の確保のため、海外人材採用に目を向けた
– 国内のエンジニア採用で課題に感じられていた部分はありますか?
松浦
国内で理系人材を新卒で採用するハードルが非常に高いというのが一番です。
職種や業務内容にもよると思うのですが、特にプログラマーなど手を動かして開発を担当してほしいとなると、学生時代からある程度プログラムを書いた経験があることが必須になります。
ここ数年国内の新卒採用でもトライはしていたのですがなかなか厳しく、それであれば視野を広げて海外から採用するのもありじゃないかと考えました。
– これまでに海外人材採用のご経験はありますか?
松浦
中途人材を中心に、現状でも組織の1/5程度は台湾、ロシア、香港育ちの方など多様なバックグラウンドを持つ人材に活躍いただいています。
新卒領域においても、10年ほど前になりますが、株式会社テリロジーの一部門として運営している際に、中国の大学からの採用を積極的に行っていた時期があります。
ただ、これまで採用した海外人材の多くが英語でコミュニケーションを行っている部署の所属で、かつ開発経験の豊富さはそこまで重視してきていませんでした。
そのため、今回xseeds Hub経由で採用した2名のように日本語で業務を行うこと・学生時代からある程度の開発経験を積んでいることを条件とした海外人材の採用は初めてといえます。
また、これまでは人材紹介会社を利用することが多かったので、xseeds Hubのように選考会形式での採用も初めてでしたが、選考にも内定出しにも、短期間とはいえある程度期間を設けることができたのは助かりました。
内定後も、入社までの月一のオンライン面談のセッティングや学習状況の共有などフォローアップが手厚いのも安心感につながりました。
約2年の内定期間=入社までの成長期間として活用
– 選考会に参加された際の学生全体の印象はいかがでしたか?
松浦
選考会に参加している学生はいずれも日本企業への就職意欲のある方だからだと思いますが、日本語がある程度話せる学生が多いことには驚きました。
もちろん流暢とまではいきませんが、面接時点である程度会話のキャッチボールができる人もいたので、内定期間の1-2年を見込めば十分に成長してもらえるイメージが沸きました。
実際入社してもらって数ヶ月ほどですが、日々日本語の進歩を感じています。
– 1-2年と長期間にわたる内定期間中、どのようなフォローを実施されましたか?
基本は月に1回のオンライン面談です。面談では事前に伝えたお題に沿ったプレゼンを日本語で行ってもらい、フィードバックをしたりそこから色々と話を広げたり、リアルな日本語に慣れてもらう場というのがベースです。
あとは、毎月xseedsのサポートチームから内定者の学習状況を共有してもらえるなど長期にわたってサポートを受けられるのもありがたかったです。
国内の新卒採用でもこれくらいしっかりと内定フォローができたらいいのにと思ったりもします。
他にはxseedsの紹介で日本語学校に通ってもらったり、ビザ取得までの期間を早める試験を受けてもらったりなど、主に日本語能力向上に重点を置いて内定者の方々にリクエストを出してできる限り対応してもらいました。
日本語能力でいうと、できれば入社までにN2(*)を取得してねと伝えていたのですが、いざ日常的にコミュニケーションを取るようになると、文法や語彙力などの知識よりも、会話力の方が重要であると実感しています。
それもあって、N3やN2などはあくまで目安だと認識するのがいいのかなと思うようになりました。
(*)日本語能力試験のレベル。「日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる」と定義される。
https://www.jlpt.jp/about/levelsummary.html
入社前インターンで研修なしのスムーズな立ち上がり
– 入社後のスムーズなオンボーディングのために工夫されたことなどはありますか?
松浦
ビザ取得の関係で想定よりも来日と入社日が遅れてしまったという事情もあって、当初から予定していた訳ではないのですが、入社前に1ヶ月ほどインターンをしてもらったのは非常に良かったと思っています。
インターン内容は業務で使う製品や技術に関するインプットを中心に行いましたが、入社前に当社で使われている技術や製品についての特徴をある程度把握してもらえるのは業務を行ってもらう上でアドバンテージになったのではないでしょうか?
ヒエウ
そうですね。インターンで学ぶのは業務と直接関係のあることばかりだったので、入社してからすごく役に立ちました。
– 入社後は研修などを実施されたのでしょうか?
松浦
いえ、研修は実施せず、入社直後から業務を担当してもらっています。
OJTとして先輩社員を数名アサインし、最初の半月ほどは週に3日は出社してもらい、手取り足取り教えてもらいました。
今ではOJTに関しても分からないところがあったら聞いたり、決定事項は報告したりなどホウレンソウは守りつつ、一定レベルの業務は任せられているようです。
– 入社後すぐの業務はハードルが高いようにも聞こえますが、実際のところいかがでしたか?
ヒエウ
嬉しかったです。学生時代はずっと勉強続きで、それだとあまり面白くないので(笑)実際の業務をやりながら、分からないところがあったら聞くという方が自分に合っています。
チョン
私も嬉しかったです。例えばロジックを作るなど、学生の時と比べて新しいことをたくさん経験できるのは楽しいです。
色々な経験をすることでどんどん成長していくのは面白いです。
– 仕事は楽しいですか?
ヒエウ
仕事はすごく面白いです。時々とても難しいこともありますが、解決方法が見つかるととても嬉しいです。
チョン
そうですね。解決方法が分からない問題にぶつかった時、それがうまくいくと自信や成長に繋がったと感じて、そういう時は仕事がとても楽しいと感じます。
外国籍エンジニアの採用はチャレンジに値する施策
– お2人に将来の目標を聞いてもいいですか?
ヒエウ
5年後も日本で仕事を続けたいと思っています。日本という国は便利ですし、日本語ももっと上手になれるよう勉強したいです。
チョン
今の仕事を通じてサイバーセキュリティの知識をしっかり身につけたいです。あとは私も日本語をもっと勉強したいです。
– 松浦さんとしてはお2人にどのように成長してほしいと思われますか?
松浦
プログラマーとしての採用なので、まずはしっかりとプログラムを書けるようになってもらうというのが基本です。
そして、自分たちが書いているプログラムがサイバーセキュリティの全体像の中でどういう形で貢献しているのかなど、広い知識と視野を身につけてもらいたいです。
そうすることで、会社が大きくなっていったときに、ゆくゆくはリーダーや部門長として活躍してもらえるのではないかと考えています。
現在でも部長クラスのメンバー4人のうち2名は女性で1名は外国籍の方であり、できるだけフラットな評価や組織構成を心がけたいと思っています。
そのためにも海外採用は時期を見ながら続けていきたいと考えています。
– 最後に、海外人材の採用にハードルを感じている日本企業の方々に向けたメッセージをいただけますか?
松浦
採用に限らず、当社の考え方として「100%無理なことが分かっているならやらなくて良いが、簡単でなくても手を伸ばし、背伸びをすれば届きそうなことならやってみる」というのがあります。
例えば、優秀なエンジニアを確保するために今すぐGAFAと同じ給与水準に引き上げられるかというと、それは非現実的な施策です。
一方で、確かな技術力を持っていて日本語のポテンシャルがある学生を採用するというのは、チャレンジに値する施策だと判断しました。
同じように、迷っている方がいるなら、ストレッチすればできそうだと思うことができるのであればやってみてもいいのではないでしょうか?