外国籍人材採用を後押ししたのは「変わらなければならない」という危機感

– 外国籍人材の採用に目を向けたきっかけは何でしたか?

松下
 ヤンマーグループは創業から110年を超えるのですが、現在では売り上げ比率の6割を海外が占めるグローバルな事業展開を行っています。
 グループ唯一の情報システム会社である当社も、国内・海外拠点ともに活用されるソフトウェアの開発、運用保守に取り組んでいるため、グローバルにコミュニケーションが取れる人材が必須です。

 数年前から英語が堪能な国内人材採用に力を入れていましたが、近年では国籍問わず優秀な人材であれば採用しようという方針を立てて取り組んでいます。
 とはいえ、これまでは留学生や日本企業での就職経験がある外国籍人材の採用しか経験がなく、来日経験のない方の採用はxseeds Hubが初めてでした。

 もう一つの理由は、ヤンマーグループでは「Change & Challenge」をスローガンとしており、我々自身が「変わらなければならない」という危機感に似たものを抱いていることです。
 前述の通りグループ全体では多くの海外人材を擁していますが、当社単体ではまだまだ国内人材の方が多い組織構成となっています。

 特に日本人は、特有のコミュニケーションや文化、価値観を持っているため、思考が同質化しがちです。
 海外人材を採用し、異なる価値観を受容し変化していける組織を目指すことは、今後の当社の成長のためにも重要な取り組みであると考えています。

– 開発組織を構築する上で課題を感じられているポイントはありますか?

松下
 今後ますます、国内IT人材市場の需給ギャップの拡大によって、経験豊富なエンジニア採用の競争率は上がっていくことが想定されています。
 新卒採用においても、データや情報系の学部の新設を行う大学も増えてきていますが、それにも増して企業側が情報工学系学生の採用に力を入れており、容易に採用できる状況ではありません。

 また、ITベンダーの価格高騰なども合わさって、国内だけで開発組織の人材を確保するハードルは非常に高くなっていると感じています。

 xseeds Hubでは、情報工学系分野の学習経験とインターンシップなどでの就業実績のある学生と出会えるという点で、即戦力に近い人材を採用できるチャネルとして期待を寄せていました。

xseeds Hub導入事例_YISS社

想定を上回る応募数獲得で良質な母集団形成が実現

– xeeds Hub導入の決め手は何でしたか?

松下
 以前xseeds Hubの営業の方から、現在ヤンマーグループでCDOを努める奥山に一度サービス紹介をしていただいたことがありまして。
 当時は奥山の管掌事業が違ったためIT人材のニーズが強くなく、お断りしたそうです。

 その後奥山がCDOに就任したのをきっかけに、グローバルかつ優秀なIT人材を採用できるチャネルとして再びxseeds Hubが話題に上がったというのが経緯です。

 あとは、xseeds Hubがベトナムを中心に展開しているというのも決め手のひとつでした。
 実は、採用とは別文脈でオフショア開発の検討を進めていた時期があり、その際の候補のひとつがベトナムでした。

 世界情勢の移り変わりで他国の地政学的なリスクが高まる中で、ベトナムは変わらず親日国として良好な関係を築いていますし、政府がIT産業を重要な成長エンジンのひとつと位置づけ、積極的に推進し、IT人材の輩出に力を入れているため非常に優秀な人材がいることも魅力でした。
 実は10年ほど前からxseedsの前身となるベトナム政府とJICAのODAプロジェクトの存在も認知していた関係で、xseeds Hubというサービスへの信頼にもつながりました。

濱崎
 あとは、xseeds学生がベトナムトップレベルのハノイ工科大学をはじめとする優秀な方々の集まりだということで、母集団としてとても魅力的だったのも大きいですね。
 加えて現地採用が初めての当社でも安心して取り組めるよう多方面でのサポートがあるのもありがたかったです。

 「応募が集まるのだろうか」という不安はありましたが、蓋を開けてみると予想を上回る応募数で2度目の選考会参加の意思決定にもつながりましたし、結果的に2度目は1度目を上回る応募数獲得につながりました。

「優秀さに感銘を受けた」面接で出会った学生の印象

– xseeds Hub選考会に参加するにあたってどのような人材を求めていましたか?

濱崎
 大きく分けると2種類です。ひとつは当社の事業の柱である基幹系システムの開発、運用保守ができるITエンジニア。もうひとつはAI技術やデータ分析を活用してDXを推進していくことのできる人材です。

 国内の新卒採用では職務範囲を限定しない”エンジニア総合職”としての採用を行っていため、xseeds Hubの選考会の準備として、業務で使用するプログラミング言語や具体的な職務内容を記載した求人情報を作成するところから始めましたね。

面接では、実際の開発環境や「どんな言語を勉強すると役に立ちますか?」など業務内容に直接的に結びつく質問が学生から多く上がってきたので、エンジニア業務の解像度が高い学生が多いという印象を受けました。

– 学生全体の印象はいかがでしたか?

濱崎
 書類選考で使用するSCP(xseeds独自の学生管理システム)上に、プログラミング言語の経験年数・学業の成績・コンテストの参加経験・インターン実績など技術力や日本語能力に関する様々な情報が数値化されているので、技術力は書類選考の段階である程度判断することができました。
 そのため、面接ではコミュニケーション能力や、異国の地で力を発揮してもらえそうかどうかという人柄の部分を中心に判断をしました。

松下
 人柄やコミュニケーション能力を大事にするのは当社全体の方針でもあります。エンジニアではありますが、グループ社員をはじめとする顧客とのやり取りやベンダーマネジメントなど、コミュニケーション能力は会社として非常に大切にしています。
 そのため面接での質問をきちんと理解し適切な回答ができるかどうかは大きな判断材料でした。

 その点、面接した学生はみなさん非常に優秀で、言語というハードルがあるにもかかわらず適切かつ礼儀正しく回答してくれて、面接を担当したメンバーは皆一様に感銘を受けましたね。
 日本へのリスペクトも非常に深くて、むしろ自分たちが彼らの期待に応えられるかなと身が引き締まる思いでした(笑)

東南アジアならではのモチベーションの高さで新たな刺激を与えたい

– 内定期間中のフォローについてお聞かせください。

濱崎
 現在は2ヶ月に1回オンライン面談を実施しており、卒業や日本語検定試験(JLPT)に向けた学習の進捗状況を報告してもらったり、xseedsサポートチームが事前に設定しているテーマに沿って内定者に日本語でプレゼンしてもらっています。

 それに加えて、日本での就業や生活での不安を少しでも軽減できるよう、我々から内定者へ日本での生活が想像できるような情報を伝えるようにしています。
 例えば日本の美味しい食べ物情報とか、大阪にはこんな観光地があるよ、会社の近くにベトナム食材のお店を見つけたよ、など、彼らのモチベーション維持につながるようなコミュニケーションに気をつけています。

 逆に、日本語教育やIT研修などのハード面はxseedsサポートチーム側でセッティングしてもらえるので、そちらに任せています。
 そのような内定後のフォローアップもxseeds Hubの大きな魅力のひとつだと思います。

– 入社後にどのような活躍を期待しますか?

濱崎
 大学4年間を通してIT技術を学んできている方々なので、まずは学んできたことを配属先でしっかりと発揮してもらいたいです。
 また日本人社員とも積極的にコミュニケーションを取ってもらって、言語や文化のハードルも跳ね返してもらいたいです。
 その経験が将来的に顧客とのコミュニケーションに生かされていくと考えています。

松下
 内定者はみなさん技術力も学習意欲も持ち合わせている方々なので、そのモチベーションの高さで日本人社員に大きな刺激を与えてくれることも期待しています。

 東南アジア諸国を見る中で、その急激な成長を肌で感じてきました。それはIT技術においても同様で、日本が近い将来追い越されるのではないかと切実に感じています。

 だからこそ彼らに入社してもらうことで、日本人とともに切磋琢磨しながら良い関係を築いてもらいたいですね。

これからの日本において、海外人材の活用はマスト

– 今後もグローバルな採用は続けていきますか?

松下
 前提として多様な価値観を持つグローバルな組織を作っていきたいという思いがあるので、外国籍人材の採用は継続するつもりです。
 そもそも国籍も性別も障がいの有無も本質的には関係なく、当社が求める人物像に合致する人材であればどんな方でも積極的に採用したいと考えています。

 グループ全体の方向性としてグローバルな事業展開はこれからも進んでいくので、外国籍人材の採用は当たり前として取り組みながら、様々なバックグラウンドの人々が目的のために力を出し合える環境づくりに力を入れていきたいと考えています。

– 海外人材の採用にハードルを感じている日本の企業はまだまだたくさんいらっしゃると思いますが、そのような方々へメッセージを頂けますか?

松下
 あえて日本人的な言い方をすると、これからも「高品質なものを低価格で」提供し続けるためには、海外人材の活用はマストの手段だと考えています。
 今やらなければますます手遅れになっていくことは確実ですし、早く取り掛かるとそれだけ自社内にノウハウが蓄積されることもメリットになるので、早めにトライされることをおすすめしたいです。
 ただ、当社としては採用面での競合が増えると困るので、xseeds Hubの存在を知ってもらいたくないというのも正直なところですね(笑)

濱崎
 今年(2023年)の6月にxseeds Hubの選考会に初めて参加したのですが、その2ヶ月前まではまさか自分が現地に赴き面接をしているとは想像もしていませんでした。
 そしてその半年後には2回目の選考会も実施しています。

 もちろんそれまでも漠然と外国籍人材の採用は必要だろうと感じてはいましたが、まさかこんなに早く実現するとは、というのが本音です。
 だからこそ、やってみると意外とうまくいくということは言いたいですね。xseeds Hubのようにサポートを受けられるサービスならばハードルは低いと思うので、危機感を覚えている企業の方はぜひ踏み出してほしいと思います。